RNA-seqを外部委託する関係で、1年間研究期間を延長した。 周術期アナフィラキシーを起こした症例2例と、各々の患者背景に類似し、全身麻酔でアナフィラキシーを起こさなかった2症例の血液検体からPBMCを分離し、RNAを抽出してbulk-RNA-seqを外部委託し行った。得られたFASTQ情報を用いてSTAR またはsalmonによるマッピング後に、発現量を定量し、iDEP(http://bioinformatics.sdstate.edu/idep95/)を用いて、発現変動遺伝子を同定し、下流解析であるパスウェイ解析を行った。 その結果、アナフィラキシー症例群では好中球の活動が抑えられていることが示唆された。 統計ソフトRで使用可能なgranulator(http://bioconductor.org/packages/release/bioc/vignettes/granulator/inst/doc/granulator.html)を用いて得られたPBMCの白血球分画を検討したが、有意な変化は無かった。 得られた情報を元に、アナフィラキシー発症に好中球がどのように関与するか、既知のパスウェイを検索し、論文報告する予定である。 また、我々がこれまでに報告したアナフィラキシー症例のMRGPRX2受容体のアミノ酸変異を再現した細胞を用いた研究が他チームより報告された。その結果では、ヒスタミン遊離は測定しないものの、肥満細胞からの脱顆粒がむしろ抑えられていると報告された。我々は、この研究結果に対してMRGPRX2受容体を介する反応は、完全な脱顆粒ではなく、いわゆるkiss and run という反応を起こしており、完全な脱顆粒を起こさずとも、低分子であるヒスタミンは遊離される可能性があり、より詳細な調査が必要ではないかとコレスポンデンスを投稿した。
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