研究実績の概要 |
我々は昨年度までの研究で、グラム陰性桿菌の細胞壁成分であるエンドトキシン (Lipopolysaccharide: LPS) が、マウス生体とC2C12培養筋管細胞の両方で、タンパク異化経路 (ユビキチンプロテアソーム経路およびオートファジー経路)を活性化させ、タンパク合成シグナルを低下 (P-Akt/Akt, P-S6K/S6K 比の低下)させ、骨格筋萎縮を誘導することを見出した。さらにTLR4特異的阻害剤、TAK-242の投与により、筋萎縮がin vitro, in vivoの両方で改善することを見出し、TLR4 シグナルが骨格筋萎縮を治療するための、新規ターゲットになりうる可能性を提示した。 熱傷によってHMGB1をはじめとするDAMPS(damage-associated molecular patterns)が放出される。DAMPSのレセプターはTLR4と2であることが分かっている。PAMPs(pathogen associated molecular patterns)を用いた上記研究の結果から、熱傷によるDAMPsの放出は、同様の経路をとおして骨格筋萎縮を誘導するのではないかと考え、本年度は熱傷モデルを用いて研究を進めた。 8-12週齢の雄性C57BL/6Jマウスに全身麻酔を導入後、恒温槽を用いて背部に体表面積20%の熱傷モデルを作成した。Sham群(36℃/20秒)、2度熱傷群(60℃/20秒)、3度熱傷群(90℃/9秒)の3群において、熱傷は侵襲度依存的に循環血漿中のHMGB1を上昇させ、前脛骨筋のIL-6 mRNA相対的発現量、P-STAT3/STAT3比の上昇を起こし、ユビキチンプロテアソーム経路(atrogin-1およびMuRF1タンパク誘導)の活性化を起こした。本年度は、これまでの研究成果をもとに、熱傷誘発性骨格筋萎縮モデルを確立した。
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