本研究では①マウスくも膜下出血モデルにおける小胞体ストレス応答UPRの発現②小胞体ストレス応答の主幹転写因子であるATF6のノックアウトマウスと野生型マウスを用いて比較検討③UPRがくも膜下出血後早期脳損傷EBIへ及ぼすメカニズム検討がメインテーマである。 本年は、野生型マウスに対して血管穿通を行いくも膜下出血群としたものと、血管穿通を行わないsham群にて小胞体ストレス応答がどのように生じているか比較した。 海馬と線条体、皮質に部位をわけた検討において、くも膜下出血群では海馬において、小胞体ストレス応答の主幹転写因子であるATF6の発現がsham群より有意に多くみられた。また、小胞体ストレス応答の下流の分子シャペロンのGRP78やCHOPも海馬と線条体で有意にくも膜下出血群で多く発現しており、くも膜下出血で小胞体ストレス応答が誘導されていることが確認された。皮質ではいずれの検討においても有意な差はみられず、小胞体ストレス応答があまり生じていないものと思われた。また、くも膜下出血群では海馬においてMMP9の上昇も見られたが、小胞体ストレス応答とどのように関連しているかまでは解明できなかった。 本年は昨今の社会的事情もあり、研究に十分な時間がえられなかった。そのため、蛍光免疫染色、血液脳関門評価、神経細胞死の割合、炎症反応の評価を進めているが、評価に十分な数に至らなかった。
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