研究実績の概要 |
ペントラキシン3(pentraxin 3)は血管内皮の障害マーカーとして主に循環器系で臨床上多く報告されている。研究者は脳梗塞後、梗塞巣周囲において活性化アストロサイトがPTX3を特に多く発現することを確認した。PTX3は障害マーカーとしての役割のみでなく、脳内における血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の保護に働くことが判明した。さらにin vitroとin vivo両者の系を用いた。 1)In vitroの系:血管内皮細胞に対し、recombinant PTX3(rPTX3)を投与し、血管新生を確認した。tube formation assayを用いてラット血管内皮細胞(RBE.4)に対するPTX3の作用を検討したところ、PTX3の投与で血管新生が抑制される傾向があることが判明した。神経幹細胞において、rPTX3を投与したところ、増殖の抑制傾向が示され、さらには神経幹細胞から神経細胞への分化も抑制する傾向があることが判明した。オリゴデンドロサイト前駆細胞に対して、rPTX3を投与したが、特に変化は認めなかった。しかしオリゴデンドロサイト前駆細胞はFGF2を投与することでオリゴデンドロサイトへと分化するため、rPTX3をFGF2と同時に投与(一方はcontrol)をしたところ、rPTX3がFGF2の作用を抑制する傾向があることが判明した。 2)In vivoの系:白質梗塞モデルマウスを作成し、梗塞巣周囲における反応性アストロサイトにおいてPTX3が高度に発現していることを確認した。また、siRNAを投与し、PTX3の発現を抑制することで障害の程度が増悪する傾向を確認中である。
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