研究課題
まずマウス脳腫瘍モデルの作成を試みた。いくつかの細胞株を候補に挙がったが、文献や当科の研究にて安定した結果がみられている細胞株である、U87d-EGFRグリオーマ細胞株と、GL261グリオーマ細胞株を用いることにした。ヌードマウス(Balbc nu/nu)にU87d-EGFRグリオーマ細胞株を、野生型マウス(C57BL6)にGL261グリオーマ細胞株を移植し、マウス脳腫瘍モデルを作成することとした。マウス脳腫瘍モデルの作成は、他の実験でも重要であり必要不可欠な実験手技であるが、開始してすぐには安定したモデルを作成することは難しかった。当初用いていた細胞株の増殖能がin vitroで弱かったことや、手技も不安定であったためと考えられた。現在用いている細胞のin vitroでの増殖能は問題なく、また細胞株の移植の手技も確立し、マウス脳腫瘍モデルが安定して作成できるようになった。脳腫瘍モデルに投与するウイルスは、単純ヘルペスウイルスを遺伝子操作して作成した腫瘍溶解性ウイルスである。当科が所有するいくつかの腫瘍溶解性ウイルスの候補の中から、in vitro実験にて比較的安定した結果が得られていたものを選択した。できるだけ同じロットで実験をすすめていけるように、これをVero細胞に感染させて増殖させ、その後精製してストックを作成した。この腫瘍溶解性ウイルスを、マウス脳腫瘍モデルの腫瘍組織に注入し、腫瘍内での増殖を図った。これは増殖したウイルスを腫瘍組織から抽出し、それを新しく作成したマウス脳腫瘍モデルに投与することによって継代することを目的としている。腫瘍へのウイルスの投与を繰り返し行い、継代に適した力価を現在検討している。
3: やや遅れている
マウス脳腫瘍モデルの作成に時間がかかってしまったことが一因にある。培養の環境が悪かったためか、継代の途中でコンタミネーションがあったためか、原因は解明できなかったが、当初用いていた細胞が適切でなく、うまく増殖しなかったためと思われる。手技の確立にも時間を要した。マウス脳腫瘍モデルの腫瘍組織内でのウイルス増殖については、投与するウイルス量が少なすぎると採取が難しく、多すぎると盛んな増殖が得られない。適正な量を確認するのに難渋している。
引き続き、計画に沿って研究・実験を進めていく。投与するウイルスの適正量を決定したのち、ウイルスの継代を行う。最終的には10-20回継代した継代株を確立する。また、今回用いている腫瘍溶解性ウイルスを使用した予備実験も行っており、これも並行して行っていく。継代株が確立できたら、継代を行い親株と継代したウイルスをin vitro/ in vivo実験で比較し、抗腫瘍効果やマウス脳腫瘍モデルの生存期間などを比較する。毒性試験、継代株のin vivo/in vitro環境での、親株と比較しての抗腫瘍効果について検討、継代株および親株の、in vivo環境での免疫応答の検討などを行い、それらに差異がみられれば、腫瘍溶解性ウイルスの継代株と親株での遺伝子変異の検索、検討を行えればと考えている。
平成30年度は、物品費を節約、また研究室に既存の消耗器材等を利用したため次年度への使用額が生じた。繰り越しされる額は、物品費(動物、抗体・キットの購入等)また資料収集のための学会出張旅費へ充てる予定である。
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Neurology and Clinical Neuroscience
巻: 6 ページ: 188-190