研究課題/領域番号 |
18K16561
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
光原 崇文 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (80571801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無血清 / 頭蓋骨 / 間葉系幹細胞 / 脳梗塞 / 移植 |
研究実績の概要 |
本年度は間葉系幹細胞(MSC)を用いた臨床研究での培養の安全性を確保するために、無血清培地を用いた培養樹立と特性解析を行った。ヒト頭蓋骨MSCは血清培地と同程度に増殖し、CD73、CD90、CD105の高発現を確認した。また骨、脂肪、軟骨への分化をそれぞれ確認した。 また頭蓋骨MSCの特性解析および移植効果確認のため、ラット頭蓋骨由来のMSCを樹立し、四肢長幹骨から樹立したMSCをコントロールとして研究をおこなった。real-time PCRにて双方の遺伝子発現を解析すると、ラット頭蓋骨MSCは神経堤のマーカーであるsnail、 p75を有意に高発現しており、神経栄養因子であるBdnfやNgfも有意に高発現であった。神経保護効果についてラット頭蓋骨MSC馴化培地を用いてNG108-15を培養し検討したところ、酸化ストレス下および炎症ストレス下でもアポトーシスが抑制されることで、コントロールにくらべて生存率が有意に高く、神経系細胞生存に有利なパラクライン効果も確認された。またIn vivoでラット中大脳動脈閉塞モデルに、脳梗塞後24時間で尾静脈からラット頭蓋骨MSC細胞移植を行うと、mNSS (modified neurological severity score)を用いた神経機能評価において、脳梗塞作成後4日目以降でコントロールに比較して、有意な機能回復を示した。(Abiko M, Mitsuhara T, et al: Rat Cranial Bone-Derived Mesenchymal Stem Cell Transplantation Promotes Functional Recovery in Ischemic Stroke Model Rats. Stem Cells Dev 27: 1053-1061, 2018)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はヒト頭蓋骨由来骨髄間葉系幹細胞の効率的な樹立と分子生物学的検討を行うことを予定していた。当初の予定通り、ヒト頭蓋骨骨髄間葉系幹細胞を安定的に無血清培地で樹立培養することができるようになり、またその特性解析、分化能の確認を行うことができた。 またラット頭蓋骨由来骨髄間葉系幹細胞を用いて神経保護作用や栄養サイトカインの検討を行い、in vivoで脳梗塞モデルラットに投与しその効果を確認した。結果を論文化した。
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今後の研究の推進方策 |
現在疾患モデルとして、脳梗塞ラットを用いて実験を進めている。神経疾患モデルとして脊髄損傷ラットでの移植効果の検討も今後行う予定である。 また臨床研究を見据えて、頭蓋骨由来骨髄間葉系幹細胞の安全性(核型分析や連続継代、軟寒天コロニー試験など)、安定性(保存方法など)についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は物品費、旅費が見込みより節約されたため、次年度に繰り越しとなった。 次年度繰り越しでは、データ解析および細胞培養のための物品購入を予定している。
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