研究実績の概要 |
本年度は初年度におこなったラット細胞をもちいた間葉系幹細胞移植効果を、ヒト細胞を用いた移植効果の検討へと発展させた。ヒト頭蓋骨MSC(hcMSCs)の特性解析および移植効果確認のため、hcMSCsの細胞学的特徴と脳梗塞モデルラットへの移植効果について、ヒト腸骨骨髄由来MSC(hiMSCs)と比較検討した。hcMSCsはhiMSCsに比べ高い神経保護効果が期待され、脳梗塞後早期の投与でより効果的な機能改善が見込まれる結果であった。 本研究の内容の概要は、①細胞学的特徴を検討するため、神経堤マーカー、神経栄養因子の遺伝子発現をreal-time PCR法を用いて解析した。②脳梗塞モデルラット作製後3時間または24時間で、1,000,000個のhcMSCsもしくはhiMSCsを尾静脈から投与し、非投与のコントロール群も含め、神経機能を評価した。③In vitroでの神経保護効果を検討するため、NG108-15を脳梗塞後の二次的損傷を模した炎症あるいは酸化ストレスに3時間もしくは24時間曝露した後、hcMSCsもしくはhiMSCsの馴化培地を加え、24時間後のNG108-15の生存率を、馴化培地を加えないコントロール群も含め解析した。結果は①神経堤マーカー、神経栄養因子の発現はhiMSCsに比べhcMSCsで高かった。②脳梗塞モデルラットの神経機能は、脳梗塞3時間後の投与では、hiMSCsやコントロール群に比べ、hcMSCsの投与で神経機能が改善した。③hcMSCs馴化培地を加えることで、ストレス曝露後の細胞生存率が改善した。 本研究結果を論文化した(Neurologia Medico-Chirurgica, Volume 60, Issue 2, 2020, Pages 83-93)。
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