当研究室で確立したくも膜下出血モデルマウスを対象として実験を実施した。モデルマウスは頭蓋内圧亢進モニター(ICPモニター)を購入したので、目視でICPの波形や最高値を確認しながら、均質なモデルマウス作成を心掛けた。その中でICPの値が大きく外れたものは想定したくも膜下出血モデルマウスの作成に至っていないと判断し、評価対象とせず、除外した。介入薬物としては脳梗塞急性期に対するfree radical scavengerであり、脳保護薬として確立されているエダラボンとAMPA受容体に作用する抗痙攣薬のフィコンパの2薬物を、モデル作成の1時間前にマウス腹腔内へ経皮的に投与した。評価項目としてはくも膜下出血発症時24時間、72時間におけるバランスビーム・バランスウォークテストによる行動解析と内皮細胞・神経細胞を免疫染色することによる病理組織学的検討を実施した。結果、いずれの薬物もsham群と比較して行動解析面、更に病理組織学的には神経細胞数・血管内皮の構造においても改善傾向にあることがわかった。上記2剤はくも膜下出血後のneurovascular unitを保護し、早期脳損傷(early brain injury)を軽減する可能性が示唆された。今後は分子学的裏付けとしてneurovascular unitを構成する蛋白の遺伝子発現量変化やそのものの発現変化をPCR法やwesterblottingにて確認すべきと考える。
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