皮質異形成病変切除をしたてんかん患者の頭蓋内脳波データ(13例、1164電極)において、マルチスケールエントロピー法を用いた解析アプリケーションを適用し、非発作期におけるガンマ波規則性をエントロピー値として定量化した。エントロピー値をZ値化し、ROC曲線を描出、発作起始部やてんかん病変部の検出率(感度と特異度)とカットオフ値を算出した。ここで低いZ値はガンマ波規則性が高いことを意味する。発作起始部は、カットオフZ値≦-2.09で、感度100%・特異度97.1%(AUC=0.992±0.002)であった。てんかん病変部は、カットオフZ値≦0.12で、感度54.2%・特異度73.8%(AUC=0.673±0.019)であった。発作 間欠期の低いエントロピー値(高いガンマ波規則性)は、発作起始部を評価する信頼できるバイオマーカーとなると期待される。逆に、発作間欠期に高いエントロピー値(低いガンマ波規則性)が維持されている部は、非てんかん領域の補助的バイオマーカーとなる可能性がある。また、様々な脳病変(血管異常症,腫瘍など)を有するてんかん患者の手術実施例の頭蓋内脳波データおよび病理学的評価について症例を重ねた。マルチスケールエントロピー法を用いた解析ソフトウェアは既にWindowsベースで作動する脳波解析アプリケーションへ発展させることができたためデータ処理が飛躍的に容易になった。ガンマ波規則性と病理学的変化との関連の解析の結果、ガンマ波規則性の高さと病理学的なてんかん原性とに強い正の相関が示された。ガンマ波規則性の高さは、信頼できるてんかん原性マーカーとなると考えられる。
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