研究実績の概要 |
家族性海綿状血管腫は、常染色体優性遺伝の形をとり、CCM1 (KRIT1), CCM2 (MGC4607), CCM3 (PDCD10) の3つの遺伝子の関与が指摘されている。近年、人種による発症頻度の違いや病因遺伝子の違いが指摘されているが、これまで本邦における遺伝解析の報告は少ない。本研究の目的は、本邦での海綿状血管腫の遺伝背景を明らかにするとともに、CCM遺伝子異常のない症例については、第4の病因遺伝子を探索することである。今回、家族性海綿状血管腫5家系、多発性海綿状血管腫3例、脊髄海綿状血管腫5例を対象にlow throughput 次世代シーケンサーを用いたCCM遺伝子のターゲットリシーケンスを行った。またCCM遺伝子異常がなかった症例に対しては全エクソームシーケンスを施行した。結果、家族性海綿状血管腫2例にCCM2遺伝子異常を認め、多発性海綿状血管腫2例にCCM1遺伝子異常を認めた。このうちCCM2遺伝子異常の1つは、これまでに報告のない新規のナンセンス変異であった。多発性海綿状血管腫の症例では、潜在的に遺伝要因を含んでいる可能性があり遺伝解析の意義があると考えられた。また今回CCM遺伝子異常がなかった症例については、次世代シーケンサーで検出できないエクソン欠失など大きな領域の欠失、重複変異をもっている可能性があり、今後Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法を用いた解析など遺伝解析の方法について検討していく必要があると考えられた。
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