ARSGにおけるレアバリアントは2例で検出された。1例は17歳時に右上肢の書痙を呈した患者であり、exon6内に東アジア人口頻度0.01%のレアバリアント(Arg233His)が検出された。もう1例は27歳時に発症した両上肢の動作特異的ジストニア患者であり、exon5内に東アジア人口頻度0.2%のバリアント(Ala180Val)が検出された。その他に検出されたバリアントは、32歳時に発症したドラム演奏時の右上肢ジストニア患者であり、DYT6として知られているTHAP1のexon1内に新規のバリアント(Gln3Pro)が検出された。また、38歳時に発症した楽器演奏時の口ジストニア患者では、ドーパミンD1受容体遺伝子であるDRD1のexon2内に東アジア人口頻度0.01%のバリアント(Val200Ala)が検出された。また、2例にSTON2におけるバリアントが検出された。1例は20歳時に発症した右上肢の書痙であり、STON2のexon5内に、東アジア人口頻度0.5%のバリアント (Arg425His)に加え、もう一つ新規のバリアント (Asn697His) が検出された。もう1例は、17歳時に右上肢の書痙で発症した患者であり、STON2のexon5内に、東アジア人口頻度0.5%のバリアント (Arg425His)が同じく検出された。いずれも手術による治療改善は良好であった。経過観察期間中のジストニア再燃、他部位の新規発症は認めなかった。 動作特異的局所ジストニアは、全身性ジストニアへと進行していく遺伝性ジストニアの初期症状の可能性があり、遺伝子検査によってその後の治療経過観察の方針検討に役立つ。ARSG遺伝子変異を有する動作特異的局所ジストニアは、本研究では8.3%にしか認められず、今後さらなる症例数の蓄積、他領域の遺伝子変異も念頭に入れた広範囲の解析を行っていく必要がある。
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