研究課題/領域番号 |
18K16579
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三橋 大樹 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (60807296)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フラビン蛋白 / 術中神経活動イメージング / 自家傾向反応 / レーザー光源 |
研究実績の概要 |
脳神経外科手術中の機能マッピングに関して神経活動自体を可視化するイメージングの手法も研究されてきた。これまでは神経活動に伴う血流変化を通して擬似的に神経活動を可視化する手法が主体であった。この手法は反応が比較的強く得られるメリットはあるものの、結局は神経活動ではなく血流変化を見ているため正確性などの面で改善の余地が残されていた。一方内因性タンパク質のフラビン蛋白は動物実験レベルでは神経活動を非常に正確に可視化できる手法として応用されてきていたが、ヒトに対する応用はされてこなかった。それは脳の拍動や呼吸性変動などのノイズの除去が困難であり、また手術室という環境で微細な輝度変化を測定することが難しいなどの要因が考えられた。今回フラビン蛋白の自家蛍光反応を用いた神経活動イメージングをヒトに対して応用するため我々はまず測定システムの確立を試みた。CCDカメラは性能やサイズからBitran社のカメラを使用。脳神経外科手術用顕微鏡は構造からLaica OH4を使用。ユニークメディカル社のトリガー発生装置及びMizuho社のレーザー光源を用いて測定システムを組み立てた。手術室において測定が可能なことを確かめ、また新潟大学院内における臨床実験の倫理申請を行い認可を得た。7名の脳腫瘍患者における手術の際に誘発した神経活動をCCDカメラで測定した。プレートの使用や呼吸との同期などの工夫を行うことで神経活動をフラビン蛋白の緑色自家傾向反応の変化として捉えることに成功した。これはヒトにおける神経活動のイメージングとしては、血流変化に基づく灌流依存性の機序ではない手法として初めての試み及び成功と考えられた。この結果から今後神経活動イメージングが脳神経外科手術支援として利用できる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初よりフラビン蛋白の微細な蛍光変化の研究室以外での測定に関して様々な環境ノイズの混入などが想定され、測定システムの構築が非常に重要と考えられた。初年度の目標としてこの測定システムの構築を第一に掲げていたが、動物実験の結果などを参考にし、手術室内の器具や照明と干渉しない測定系を探し約半年程度で第一回目の測定を行うことができた。しかしヒトの脳の拍動や呼吸性変動というモーションアーチファクトが想定より非常に大きく当初は正確に蛍光変化を捉えることに難渋した。呼吸と測定との同期、拍動の抑制などの工夫や加算平均方法の工夫などを行うことで徐々にイメージングを成功することができるようになった。当初の予定していた症例数にわずかに足りないものの、約1年で7名のイメージングに成功しており実験計画から大きな遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
現在測定に成功した7名のデータと動物実験データを合わせて論文投稿を行う準備中であり本年度中の採択を目指している。研究に関しては測定システムがまだ複雑である点、症例によっては多くの加算平均回数が必要であり測定時間及び解析時間が長くなることがあるなどの課題がある。今後は測定システムの簡略化、そして測定と加算及び解析を可能な限り同時に行うリアルタイム解析を目指して行く予定である。最終的には神経活動イメージングの技術を脳神経外科手術の安全性を向上させる手術支援として確立することを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初測定データの解析などに関して解析ソフトの購入を予定していたが、現状で動物実験において使用していたHamamatsu photonics社のAquacosmosを流用しておりその購入資金が次年度へ繰越となっている。今後リアルタイム測定などの解析系の向上も課題となっており、またAquacosmosの販売が終了となっていることもあり、新たな解析ソフトの導入を検討中である。
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