硬膜動静脈瘻は後天的に生じる稀な頭蓋内シャント疾患である。発生部位は頭蓋内の種々の部位があるが、日本における全国調査の結果より、海綿静脈洞部は他の部位に比して2倍以上男性より女性に多い。症状は多彩であり、また診断や治療においては非常に専門的な知識と経験を必要とする疾患である。硬膜動静脈瘻の原因は不明であるが、外傷・骨折・炎症・静脈高血圧など多くの複合的因子が関与する。海綿静脈洞部は脳下垂体に接している静脈洞であり、下垂体ホルモンが血中に分泌されているため、性差を考慮すると、同部位は少なからず性ホルモンの影響があると推察した。その関連を明確に示唆する研究や論文は極めて少ないため、この部位における発生要因としての下垂体ホルモンやその周辺因子につき評価および研究を行った。性ホルモンとその代謝因子、生活背景の因子(飲酒・喫煙・妊娠分娩歴など)なども合わせて調査した。現在は本学生命倫理委員会へ申請を行うと同時に、機器部門と相談し、性ホルモンの測定につい てELISA法を用いて解析を行った。同意いただいた症例より血液サンプルを採取し、解析を行った。 海綿静脈洞部・内頸静脈・末梢での同時採血は海面静脈部15例(65.22%)、横静脈洞部10例(52.63%)の硬膜動静脈瘻症例25例で行った。E2とLHは、内頸静脈部と末梢部の間に有意差があった。またE2はCS群と横静脈洞部(TS)群でも有意差があった。CS群では内頸静脈部は末梢血より有意に高値であった。プロゲステロンとFSHは、採取部位や群間で有意差はなかった。LHについては、女性では内頸静脈での採血が末梢と比べて全体的に有意に増加したが、男性では差がなかった。プロゲステロンでは、女性の内頸静脈部で有意に減少したが、部位別で層別化すると差は認めなかった。
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