研究課題/領域番号 |
18K16584
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 大嗣 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (80622167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | glioma |
研究実績の概要 |
アストロサイト特異的Rac1ノックアウトマウスの実験からRac1-GSPT1シグナル経路が細胞周期に関わっていることを発見した。Rac1-GSPT1シグナル軸が活性化され腫瘍増殖に働いていることが推察される。今回申請者は、グリオーマにおけるGSPT1の発現量と腫瘍悪性度の関係を手術サンプルを用いて検証し、グリオーマ培養細胞や脳腫瘍移植マウスに薬剤を用いてGSPT1の発現を抑制し、腫瘍増殖抑制効果について検証する新たな研究を計画した。 In vitroでの解析ではグリオーマ培養細胞において、GSPT1が過剰に発現されていたため、実際のグリオーマ組織でのGSPT1の発現について、まず最初に解析した。様々なグレードのグリオーマ組織をGSPT1の抗体で免疫染色すると、正常脳に比べ腫瘍では発現が増加していた。腫瘍細胞は細胞質に優位に発現しており、細胞質で作用する蛋白であることが臨床検体でも確認できた。また、mRNAの発現について解析すると、腫瘍周囲正常脳と比較して、腫瘍では増加している傾向はあるものの、有意差は認めなかった。グリオーマのグレードと発現量を比較してもグレード間での有意な発現の差は認めなかった。 ヌードマウス脳内にU87グリオーマ細胞を移植した腫瘍組織では非常に高度にGSPT1の発現上昇が認められ、CC885(GSPT1阻害剤)を腹腔内投与してGSPT1を阻害すると、腫瘍の増大が抑制され、腫瘍内GSPT1の発現が低下し、腫瘍細胞は変形しアポトーシスを起こすことが明らかとなった。生存曲線で比較すると、コントロールに比べ、CC885投与群では有意に生存期間を延長させた。CC885のGSPT1阻害剤の阻害メカニズムについて現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GSPT1の阻害により、マウス移植モデルにおいて生存期間の延長が得られ、GSPT1阻害による抗腫瘍効果がin vivoレベルにおいて確認された。また、CC885の阻害メカニズムについていくつかの解析を行っており、おおむね順調に進んている。
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今後の研究の推進方策 |
GSPT1阻害剤の抗腫瘍効果について、作用機序を含めた解析を行う予定である。現在CC885阻害剤においては明らかな抗腫瘍効果を認めており、これがGSPT1阻害により抗腫瘍効果を示しているか、その作用機序についても詳細に解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納入が遅れたため、次年度使用額が生じました。試薬などの消耗品として使用する予定です。
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