研究課題/領域番号 |
18K16585
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平松 匡文 岡山大学, 大学病院, 助教 (50771953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性脳虚血モデル / 間接血行再建術 / HMGB1蛋白 / VEGF / 血管新生 |
研究実績の概要 |
両側総頚動脈を結紮することで作成した慢性脳虚血モデルラットに対して、作成の1週間後に右側頭頭頂部の間接血行再建術(側頭筋を脳表に敷き込む手術)を行い、その際にHMGB1蛋白(1μg)を側頭筋に筋注したHMGB1群と生理食塩水のみを筋注したcontrol群に分けた。間接血行再建術4日後および14日後の時点で脳を摘出し、摘出脳の大脳皮質の血管数と、大脳皮質および側頭筋のVEGF蛋白の発現程度を評価した。大脳皮質の血管数に関しては、4日後では非手術側(左側)と手術側(右側)を比較すると2群とも有意差は認められなかったが、14日後では、HMGB1群において非手術側と比較して手術側での血管数の有意な増加が認められた(p<0.01)。また、14日後のcontrol群の手術側と比較して、14日後のHMGB1群の手術側で血管数が増加している傾向が認められた(p=0.069)。VEGF蛋白の発現に関しては、ELISAでの評価を行い、4日後の大脳皮質では2群とも手術側と非手術側で差は認めず、HMGB1群の側頭筋では非手術側と比較して、手術側で有意にVEGF蛋白濃度が上昇していた(p<0.05)。14日後の大脳皮質では、やはり2群とも手術側と非手術側で差を認めず、2群とも側頭筋では非手術側と比較して、手術側で有意にVEGF蛋白濃度が低下していた(p<0.01)。 これらの研究結果から、慢性脳虚血モデルに対する間接血行再建術時にHMGB1蛋白を局所に投与することで、早期に側頭筋内にVEGF蛋白が発現することで14日後の脳表の血管新生を促進できることが判明した。我々は以前に、VEGF遺伝子の局所への導入による脳表の血管新生促進作用を確認していたが、今回の研究により、遺伝子導入ではなく蛋白投与での効果を確認できたため、より臨床応用に近づいたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の段階としては、1. 動物実験計画の承認を得る、2. 慢性脳虚血モデル作成とHMGB1蛋白導入、3. モデル脳での新生血管の評価、4. モデル脳での血管新生に関与する遺伝子発現の評価、5. In vivoでの脳血流の評価、6. 統計学的データ解析・学会発表・論文投稿を予定しており、当該年度に1-4の段階を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記の研究段階の5-6を行なっていく必要があり、特にin vivoでの脳血流評価が重要である。脳血流評価としては、モデルに対して核種のI123-IMPを静注して小動物用SPECTを撮影することで、脳血流の評価を行う予定である。脳血流評価のタイミングとしては、血管数が増加した間接血行再建術14日後を予定している。 脳血流評価を終えた後に、論文投稿に向けて準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、物品費を節約また研究室に既存のものを利用したため次年度への使用額が生じた。繰り越しされる額は動物購入、免疫染色のためのキット購入等へ充てる予定としている。
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