腫瘍幹細胞は、非対称分裂と対称分裂を使い分けることで、幹細胞性の維持と腫瘍組織の不均一性のバランスをとり、様々な環境に適応する。それが腫瘍形成や増殖、さらには放射線治療や薬物治療に対する抵抗性に深く関わっている。分裂機構を制御して、腫瘍組織から腫瘍形成能を有する腫瘍幹細胞をできる限り排除し、より分化した細胞集団に導くことが有効な治療法のひとつと考えられる。 Glioma stem-like cell: GSLCの幹細胞性の維持にTGF-βが関与し、TGF-β阻害剤がGSLCの腫瘍形成能を著しく阻害することが報告されている。一方で同じくTGF-βファミリーに属する骨形成因子Bone morphogenetic protein 4: BMP4はGSLCの腫瘍形成能を低下させることが報告されている。その機序については未解明な部分が多い。そこで我々は、腫瘍幹細胞は非対称分裂をするという現象に眼を向け、BMP4の幹細胞性を阻害する作用について検討した。 BMP4投与下では、CD133の発現は抑制された。さらにBMP投与下での幹細胞分裂を蛍光染色で観察すると、CD133が二つの娘細胞へ不均等に分配される非対称分裂が誘発されていることが分かった。つまり、BMP4投与により非対称分裂が誘発されることで、細胞集団の中で幹細胞性の低い細胞の割合が増えていると考えられた。このことはBMP4がGSLSを標的とした治療手段になり得ることを示している。
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