脳腫瘍の中で最も悪性度の高い神経膠芽腫の治療抵抗性の要因として、腫瘍幹細胞の存在や腫瘍内低酸素環境の存在が挙げられる。申請者の研究グループではCu-ATSM PETを用いて、神経膠芽腫内における低酸素領域を可視化する方法を世界に先駆けて報告した。さらに本年、Cu-ATSMが高集積する神経膠芽腫内から分離した細胞株をSCIDマウス脳内へ移植し、Cu-ATSM高集積神経膠芽腫幹細胞株の樹立に初めて成功した。本細胞株由来の脳腫瘍モデルマウスは、理論的にはCu-ATSM高集積を呈すると推察される。本研究ではこれらの脳腫瘍モデルを用いて、Cu-ATSMが低酸素領域に集積するメカニズムをin vivoで詳細に検討する。さらに、低酸素領域あるいは幹細胞が高頻度に分布する領域にCu-ATSMが高集積する原理を応用し、64Cuが細胞に障害を与えるβ-線を放出することを利用した、治療抵抗部位を標的とするCu-ATSM内用放射線治療という新たな神経膠芽腫治療法の開発を本研究目的とする。
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