研究課題/領域番号 |
18K16595
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
永石 雅也 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40364632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ZEB2陰性発現 / ZEB1陽性発現 / TGF / VEGF / FGF |
研究実績の概要 |
本研究は神経膠腫の中でも悪性度の高い腫瘍亜型である神経膠肉腫の発生メカニズム解明を目的としている。これまでの研究で我々は、分化した星細胞系腫瘍細胞が間葉系細胞へ形質転化する可能性を示した。具体的には上皮間葉系移行関連転写因子である、Slug, Twistが神経膠肉腫の間葉系成分に限局して発現していた。同様の実験手法でSlug, Twist以外の上皮間葉系移行関連転写因子で、他癌種にてその発現が確認されているZEB1/ZEB2の発現検討を第一に行った。ZEB1/ZEB2抗体の免疫染色条件を確認・設定し、神経膠腫標本を用いてZEB1/ZEB2染色発現を解析した。 結果、ZEB1発現は通常の神経膠腫細胞で発現が確認されたが、ZEB2の発現は見られなかった。間葉系移行に関連する転写因子ZEB1は通常の神経膠腫細胞にも発現しており、肉腫様細胞への分化誘導への関連性は薄いと考えられた。一方でZEB2は神経膠腫細胞での発現はなく、同分子の形質転換への関連性が示唆された。神経膠肉腫検体における、各腫瘍領域での発現の違いを現在解析している。さらに上流刺激因子であるTGF-beta, FGF, VEGF抗体の染色条件を検討している。ZEB2の上流因子であるTGF-beta、またこれまでの実験で証明されたSlug, Twistの上流因子であるFGFの神経膠腫領域・間葉系領域の発現差の検討が重要となってくる。より関連性の高い分子を同定した上で、同分子のcoding遺伝子の変異、miRNAの関与について検索していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮間葉系移行関連転写因子であるZEB1/ZEB2発現の解析を行い、これまでの研究成果で得られていたSlug, TWIST以外に神経膠細胞の形質転換に関与する因子の検索を行う。その発現結果を踏まえて、それぞれの上流刺激因子にあたるMAPK, PI3K/Akt, Smad, TGFβ, FGF, VEGF発現解析、間葉系分化を示す神経膠腫に特有のmiRNA発現を同定へと進めていく予定である。 本年度の目的は染色条件の決定と、神経膠腫における発現解析であった。神経膠腫におけるZEB1発現がみられ逆にZEB2発現がみられなかったことから、間葉系への形質転換に関与しうる可能性のある分子はZEB2となった。上流刺激因子の免疫染色、蛍光抗体染色の染色条件が安定せず、現在安定した染色条件を探索している。
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今後の研究の推進方策 |
MAPK, PI3K/Akt, Smad, TGFβ, FGF, VEGF染色の条件設定が必要となる。蛍光染色法では形質特定のため、2重染色にて神経膠細胞、間葉系細胞の違いを明らかしその発現の差を検討する。定量解析の必要がある場合には、レーザーダイセクション法で神経膠細胞領域と、間葉系細胞領域から別々に腫瘍細胞を採取し、qPCR法にて発現の違いを定量評価する。しかしながら、神経膠肉腫検体のそれぞれの腫瘍領域はそれほど明瞭に分かれているわけではなく、混在している症例が多い。検討可能な症例を厳選し、実験する必要がある。また上記手法でDNA/RNA抽出を行った場合、細胞数が十分でない場合があり、その場合はwhole genome amplification法でgenome増幅を図る。染色・定量解析の結果を踏まえて、関連miRNAを検索しその発現を解析していく予定である。現在多数のmiRNAとその関連分子が報告されており、より関連の深いmiRNAを候補とする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
染色条件が決まらずに実際の染色実験に進めていない抗体があり、現在他社製品などでその染色性を確認している。実際の染色に必要な抗体購入費用が次年度使用額となっている。染色の確認、条件の設定が出来次第、染色枚数に必要な抗体をまとめて購入する予定である。
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