研究課題/領域番号 |
18K16595
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
永石 雅也 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40364632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ZEB2陰性発現 / ZEB1陽性発現 / TGF / VEGF / FGF |
研究実績の概要 |
本研究は脳腫瘍における上皮間葉系移行メカニズムの解明を目的としている。これまでの研究で、分化した星細胞系腫瘍細胞が間葉系細胞へ形質転化する可能性を示した。具体的には上皮間葉系移行関連転写因子である、Slug, Twistが神経膠肉腫の間葉系成分に限局して発現していた。昨年までの2年間の研究で、上皮間葉系移行関連転写因子のうち、他癌種にてその発現が確認されているZEB1が神経膠腫細胞で発現、ZEB2の発現は見られなかった。ZEB1は全例50%以上の腫瘍細胞で発現、ZEB2は30%の症例で50%以上の腫瘍細胞発現が観察された。通常の神経膠腫細胞で発現されるZEB1は、肉腫様細胞への分化誘導への関連性は薄いと考えられた。一方でZEB2は神経膠腫細胞での発現はなく、同分子の形質転換への関連性が示唆された。次に下流分子の発現解析では、E-, N-cadherin, MMP2は神経膠細胞で発現がなく、MMP9が40%の症例で観察された。免疫染色で確認された蛋白発現がmRNAレベルでも高い発現を示すことを確認した。上皮間葉系移行は転移・浸潤において大きな役割を担っているとされている。神経膠腫の頭蓋外転移は極めてまれであるが、頭蓋内の播種は再発例を中心に多く見られる病態である。頭蓋内への播種、頭蓋外への転移組織の検索を行い、転移・播種病変でTWIST, ZEB2の高発現が確認された。 これまでの研究により、神経膠腫細胞の肉腫様形質変化、及び播種・転移に上皮間葉系移行メカニズムが関与していることがわかった。主に転写因子としてZEB2高発現が関与し、下流因子としてMMP2が蛋白分解に作用している。細胞間結合の減衰を来す主要メカニズムとされるcadherinの発現及び発現スイッチが、神経膠腫の形質転換に関与していないことも重要な結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫染色による蛋白発現の結果を、mRNA解析により裏付けすることができた。さらに神経膠腫細胞の転移・播種メカニズムにも、上皮間葉系移行メカニズムの関与が示された。下流因子としては、癌腫で示されるE-cadherinの消失、N-cadherinへのスイッチではなく、MMP2高発現が細胞間接合の減衰に関与していると考えられた。これまでの研究報告から、遺伝子変異による上皮間葉系移行関連転写制御因子の高発現は否定的で、micro RNAの関与が示唆される。しかしながら、本年の研究で特異的なmicro RNA発現が同定できなかった。その他のエピジェネティクスが関与していると考えられ、検索を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
神経膠肉腫、神経膠腫における転写制御因子の発現解析を行い、浸潤・播種との関連性を研究する。また、近年腫瘍発現メカニズムへの関与が明らかになっているCDKN2A/2B, TERT, IDHなどの遺伝子異常を解析し、これら転写制御因子との関連性を調べる。遺伝子検索はシーケンス、MLPA法にて行っており、臨床データとの関連性を統計解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
神経膠肉腫、神経膠腫における形質転換に関与すると考えられる転写制御因子の同定、下流因子としてカドヘリンの関与が明らかとなった。転写制御因子の調整役としてmicroRNAの関与を考え、数症例で解析を行ったが関連性は見つからなかった。全症例への解析には進まなかったため、次年度使用額が発生している。昨年から、関連性が認められた転写制御因子と、遺伝子異常との関連性を解析しており、8割の解析が終了している。本年、残り2割の解析を行う予定である。
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