安全で効果的な嚥下のリハビリテーションの開発を目的とし、ミラーニューロンという「他者の行動を自分の行動として置き換えて活動する大脳皮質のニューロン」に着目し、リハビリテーションを行う年代に近い高齢者を対象とし、嚥下のミラーニューロン活動について検証した。 研究方法は健常高齢者15名(男性8名,女性7名,平均年齢66.4歳,右利き)を対象とし、ATR脳活動イメージングセンター(京都市)に設置されている3T-fMRIを使用した。被験者には1.水嚥下側貌,2.咀嚼嚥下側貌,3.水嚥下X線透視側貌,4.咀嚼嚥下X線透視側貌の4種類の刺激動画と、これらの動画を1000分割し、モザイク状とした動画4種類をコントロール動画を提示した。データ解析は各被験者の動画提示時のBOLD効果に基づいたfMRI信号を計測し、データ解析ソフトMATLAB & SIMULINKとSPM12を用いて、各動画とそれらのコントロール動画提示時の脳活動を差し引く差分法を用い、集団解析を行った。 各動画提示時のミラーニューロン脳活動野の有無、脳活動量の左右差についてt検定(Wilcoxson検定、P<0.05)を行った。今回使用したすべての嚥下関連動画提示により、高齢者でも6野(前運動野・補足運動野)、40野(縁上回)、44野(下前頭回)で脳活動を認め、ミラーニューロンの活動が示唆された。特にX線透視動画で脳活動が顕著にみられ、その中でも4.咀嚼X線透視動画が一番の活動性を認めた。これは口腔期、咽頭期、食道期における食塊の流れが、一連の嚥下運動を想起させやすいことが考えられた。この結果は嚥下障害の患者の新しいリハビリテーションになりうると考えられた。これらの研究成果は第307回東京歯科大学学会、第64回に本口腔外科学会学術総会にて発表した。
|