研究課題/領域番号 |
18K16599
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小関 宏和 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10766546)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性ストレス / 脳動脈瘤 / 脳血管障害 / SITH-1 / CFD |
研究実績の概要 |
昨年度までのラット慢性ストレスモデルを用いた検討において、脳動脈瘤形成との間に有意な関連性は見出せなかった。この結果より、臨床において脳動脈瘤破裂と慢性的精神ストレスの関連を再検証する必要があると考え、症例対照研究を計画した。本研究では、未破裂脳動脈瘤患者と破裂脳動脈瘤患者、各20例ずつを対象として、ストレス耐性マーカーとして近年着目されているSITH-1抗体価を測定、比較することとした。ここでSITH-1は、潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B (HHV-6B)において、ストレスや疲労刺激により産生されることが想定される潜伏感染タンパクであることから、SITH-1の抗体価はストレス耐性の評価として有用となると考えられている(Kobayashiら, iScience, 2020)。実際、この抗体は健常人ではほとんど検出されないのに対し、うつ病患者で高頻度に検出された。本研究は、次年度開始に向け、本学倫理委員会申請中である。 上記研究と並行して、新規脳動脈瘤モデルを用いて脳動脈瘤における血行力学的因子(血流ストレスマーカー)の探索を行った。本モデルは、ラットの片側総頚動脈を切離し、対側総頚動脈の側面に吻合することで分岐部を形成することにより作製し、実際に新規総頚動脈分岐部近傍に高率に動脈瘤を誘発できる。作製した動脈瘤の形態を核磁気共鳴血管画像(MRA)を用いて撮像し、この画像をコンピュータ数値流体解析(Computational Fluid Dynamics: CFD)すると、 低Wall Shear Stressと高いOscillatory Shear Index がマクロファージ依存的な脳動脈瘤増大を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの慢性ストレス動物モデルを用いた検討では予想に反した結果が得られ、慢性ストレスの有無によって脳動脈瘤の形成に差は見られなかった。それのみならず、ストレッサーに対する反応はオスとメスで異なることがわかり、当初の予想から大きく異なる結果を得るに至った。この結果を受けて、これ以上の慢性ストレス動物モデルでの検討は困難と判断したが、当初の予定通り、脳動脈瘤と慢性ストレスの関連性を検証する臨床研究を立案、本学倫理委員会へ申請した。 また、動物実験においては血流ストレスと呼ばれる血行力学的因子の中でも、脳動脈瘤病態形成に寄与するパラメーター探索のため、新規動脈瘤モデルを作製し検討を行い、5項に記載の通りの成果を得た。 以上より、当初の実験計画から若干の変更はあるものの、上記経過にて全体として概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の検証を推進するため、次年度は探索的研究として症例対照研究を計画した。同研究は半年から1年程度で目標症例数が得られることが期待できるため、速やかな患者登録と結果の解析、成果の公表を行うことを目指す。解析結果を受けて、前向き研究などのより大規模な臨床研究への足掛かりとなるよう、並行して準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、学会出張を控えたために学会出張予算30万円に対して0円の支出となった。こうして発生した残助成金のうち、一部は実験試薬、物品費として使用した。残助成金は、次年度の研究計画に沿って使用するとともに、成果公表費用として補填する予定である。
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