研究課題
はじめに、ラット脳動脈瘤モデルを用いて慢性的ストレス負荷による脳動脈瘤の増大効果を検証した。ストレッサーとして拘束モデルを採用し、慢性ストレス評価として副腎皮質重量と毛髪内コルチゾールを測定し、拘束の有無それぞれにおいて脳動脈瘤のサイズ等を比較した。その結果、オスでは拘束モデル群において副腎皮質重量、毛髪コルチゾールともに有意に大きかったが、メスでは拘束の有無で差がなかった。また、両群間において脳動脈瘤には差が見られなかった。以上より、同一ストレッサーでも感受性には性差があることが示唆された。また、拘束による慢性ストレスでは、脳動脈瘤との因果関係は示されなかった。次に、本学ウイルス講座において慢性ストレスマーカーとしてSITH-1が同定されたことを受け、未破裂脳動脈瘤患者、くも膜下出血患者20例ずつを対象として、血中SITH-1濃度を比較することとした。なお、SITH-1高値の患者では低値の患者と比較してうつ病の発症率が12倍高くなることが示されている。2022年3月までに患者登録を終了したが、SITH-1の解析は完了できなかった。また、脳動脈瘤モデルを用いて脳動脈瘤における血行力学的因子(血流ストレスマーカー)の探索を行った。作製した動脈瘤の形態を核磁気共鳴血管画像(MRI)を用いて撮像し、コンピュータ数値流体解析を行い、血管を伸展させる血行力学的因子が脳動脈瘤の発生に寄与しており、血管壁へのずり応力のパラメータが増大を制御していることを示した。以上より、本研究の目的である脳動脈瘤破裂と慢性的精神ストレスの関連性を明らかにすることは道半ばであるが、すでに得られた患者検体のSITH-1測定により、近い将来目的を達成することが可能である。また、SITH-1を介した慢性的精神ストレスと脳血管疾患との関連性の検証も既に開始しており、今後の発展に繋がる研究基盤が構築できた。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)
Journal of Neurosurgery
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https://researchmap.jp/hk-ns-19
https://www.researchgate.net/profile/Hirokazu-Koseki
http://www.jikei.ac.jp/academic/research_achievements/