研究課題/領域番号 |
18K16601
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
白川 学 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50425112)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒト羊膜由来間葉系幹細胞 / 中大脳動脈永久閉塞モデル / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、マウスの脳梗塞や脳出血モデルに対して、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞の急性期静脈内投与を行い、その有効性を報告してきた。今後ヒトへの応用を考える際には、定期的に脂肪の提供を得る体制の構築および倫理的な問題が存在する。そこで本研究では侵襲なしに組織が入手可能な羊膜に注目した。 ヒト羊膜由来間葉系幹細胞(AMSC)は兵庫医科大学 先端医学研究所 山原研一より提供頂いた。このAMSCが間葉系幹細胞としての性格を満たすことはすでに確認済である。 当該年度では、まずAMSC静脈内投与による脳梗塞後の神経学的後遺症の軽減効果の有無につき検討を行った。全身麻酔下にCB17 マウスを用いて、開頭ならびに直接凝固切断による左中大脳動脈永久閉塞マウスを作成した。脳梗塞誘導24時間後にAMSCを静脈内投与した。今回は、臨床応用の際の高容量群(一個体100000個)と低容量群(一個体25000個)の2つの容量群を設定した。脳梗塞誘導2ヶ月後の亜急性期~慢性期に、多角的な神経行動学的試験を行い、神経学的後遺症の軽減につき検討を行った。 主に運動機能を評価する試験系においては、AMSC投与群において、運動機能の改善が見られた。また、持久力や運動機能・意欲の評価系においても、AMSC投与群において、機能の改善が認められた。その他、記憶に関する2つの評価系においても、AMSC投与による神経行動学的改善が認められた。 これらの結果から、AMSCの脳梗塞誘導24時間後の投与は、脳梗塞後の神経学的後遺症を軽減する可能性が高いと考えられ、引き続きそのメカニズムの解析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスの行動試験が、本研究でもっとも時間がかかり、かつ有効性を証明するため重要な試験である。神経行動試験でAMSCの有効性が証明されたため、次の課題はその有効性メカニズムの評価である。現在、有効性評価のためのサンプル作成を行っており、おおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、モデルマウス作成後にAMSCもしくは溶媒を投与したマウスから脳サンプルを得て、免疫染色・フローサイトメトリーでの炎症細胞の数ならび分画の変動・ウエスタンブロットによるタンパク質解析・PCRによるRNA解析を行い、細胞投与がどのように作用しているかを検討する予定である。免疫染色・フローサイトメトリーではマクロファージの数ならびその分画に着目し、ウエスタンブロットやPCRではそれが分泌すると炎症ならび抗炎症サイトカインを中心に解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は神経行動学的試験のためのマウスモデル作成が中心となり、モデルマウス作成費用が主となったため、コストが予定より少なく済んだ。次年度は分子生物学的解析に必要な抗体やプライマーが必要となり、特にフローサイトメトリーには多くの抗体が必要となるため、それらの購入に使用する予定である。
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