研究実績の概要 |
羊膜由来幹細胞(hAMSC)が、既存のグルトパ静脈注射や血栓回収術といった治療により脳血流改善によって不可逆的な脳梗塞への変化を抑制しうる時間的制約を超えた時期に、完成した脳梗塞に由来する神経脱落症状の改善に資するかを検討するため、マウスの中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルに対してhAMSCの経静脈投与による神経脱落症状の改善が得られるかを行動実験で検討した。結果、脳梗塞発症24時間という比較的遅い時期のhAMSC投与によって容量依存性に神経脱落症状が脳梗塞発症1~2ヶ月後の慢性期に改善することが示された。近年、脳梗塞完成後の炎症反応が二次的に脳梗塞巣周囲の損傷を助長することが知られており、他疾患への臨床応用においてhAMSCには免疫調整作用があることがわかっている。そこで、次に、hAMSCによる神経症状改善の分子メカニズム解明のため炎症性サイトカインに注目して脳梗塞発症7日目のRT-PCRによる脳組織のmRNA発現状況を検討した。その結果、炎症性サイトカインで組織障害性のあるTNFα,MMP9,MMP2がhAMSC投与により有意に抑制されており、IL1βに関してもその傾向があることが確認された。この傾向は、TNFαに関してはwestern blottingでも同様に見られ、さらにcaspase p17の発現もhAMSC投与により抑制される傾向にあり、炎症性サイトカインの抑制により最終的に脳梗塞巣周囲のアポトーシスによる遅発性細胞死を抑制することにもつながっていると考えられた。これらの結果を鑑み、今後MMP2,9に関連してgelatin zymography,Evans Blue投与実験による脳血液関門破綻の抑制作用についての検討、TUNEL染色・免疫染色による脳梗塞巣周囲の炎症細胞浸潤・apotosisによる細胞死の抑制作用の有無を病理学的に検討することを計画している。
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