虚血性脳卒中は、「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」を低下させる主たる原因となっている。今現在、脳梗塞治療の脳保護薬としては、本邦でのみ認可されているフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボン(ラジカット)があるが、残念ながら、世界標準の治療薬とはなっておらず、その意味において、世界に認められた脳保護、すなわち、発症後の虚血環境において脳組織を壊死から守るという強力な保護作用を有する薬剤の開発が求められている。 本研究では、当該研究室独自の一定体積の脳梗塞が出現する3血管閉塞脳梗塞(3-VO)モデルマウスを用いて、数種のアミノ酸の脳保護作用の有無を検討し、脳梗塞を縮小させる脳保護薬候補物質を探索した。 前年度に引き続き、脳保護薬となり得るアミノ酸を探索し、虚血急性期(24時間後)の評価を行った。具体的には、局所脳虚血に対する脳保護効果の有無を調べる目的に、各個体へ3血管閉塞による局所一過性脳虚血を負荷し、数種のアミノ酸を静脈内投与し、局所神経機能の判定および脳梗塞体積の算出を行った。 その結果、昨年度に示されたセリンの他にも数種のアミノ酸に脳梗塞体積を縮小させる可能性があることが示唆された。しかし、局所神経機能の判定については、虚血急性期では難しく、それらの数種のアミノ酸について、さらに、虚血慢性期(7日後)の検討が必要であることが示された。
|