研究実績の概要 |
岩木健康増進プロジェクト健診では、平成19年度から変形性膝関節症(膝OA)の調査を施行しているが、本研究は早期膝OAに着目し疫学調査を進めてきた。早期膝OAは女性での有病率が高いことに加え、進行期OAの有病率が急増する60歳台の直前に当たる50歳台での有病率が最も高く、20%に至ることを明らかにした(Sasaki E, KSSTA 2020)。MRIを用いた調査ではX線学的変化のない膝であっても早期OAに該当する人では滑膜炎や骨髄病変、半月板病変の有病率が高く、痛みに強く関係していた(Ota S, Sci Rep 2021)。特に骨髄病変を有する例では全身骨密度が低く、高骨代謝回転を示しており、骨粗鬆症との新たな関連を示すことができた(Ota S, Arthritis Res Ther. 2019)。さらに下肢アライメントとの関連をみても脛骨内側高原の局所内反が強い骨形態が骨髄病変のリスクとなっていた(Ishibashi K, KSSTA 2021)。一方滑膜炎に注目すると、早期OAにおける滑膜炎の程度をMRIおよび血液データより証明した(Ishibashi K, Sci Rep 2020)。半月板病変に関してはこれまで超音波を用いた評価を継続して行ってきたが、内側半月板が4mm以上内側に逸脱している群では5年後にOAを発症・進行するリスクが高いことを明らかにした(Chiba D, Euro Radiol. 2020)。Biomarkerに注目した解析では女性の卵巣加齢マーカーの一つである抗ミュラー管ホルモンが閉経移行期女性における早期OAの予測マーカーになることを報告した(Sasaki E, Sci Rep 2021)。現在も各側面からの縦断解析を継続して行っている。
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