研究課題/領域番号 |
18K16611
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山本 尚輝 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (60808046)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血管新生 / VEGF / 血管内皮細胞活性化 / 活性窒素種 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
今年度は血管新生の可視化のための血管造影法の確立、高気圧酸素治療(HBO)が急性期骨格筋圧挫損傷において血管新生を促進することを確認した分子メカニズムを明らかにする研究を進めた。今年度の補助金は凍結標本の作成や抗体、ラットの購入費にあてられた。 血管造影法の確立のためバリウム造影を確立後マイクロフィルを用いたが、ラット下肢の造影はうまくいかず、バリウム造影後にμCT撮影を施行し比較を試みたが細部の造影にばらつきを認めた。心臓からの造影剤投与が原因と考えられたため大腿動脈からの造影剤投与を行う予定である。そのため今年度は分子メカニズムの解明に力を入れた。その結果HBOがVEGF、血管内皮細胞の増殖、血管新生を促進することを示すことができた。また、HBOが酸素を増加させることで活性酸素種(ROS)や活性窒素種(RNS)を増加させることとROS,RNSが血管新生に関与することに着目し、これらを阻害することで血管新生が阻害されるのかどうかを確認しHBO特有のプロセスで血管新生を促進していることを研究項目に加えた。その結果ROS、RNS阻害により血管新生が阻害されることが明らかとなった。 また筋損傷後の血管新生や筋再生に対して基礎的な見解ならびに意見交換を行うために第33回日本整形外科学会基礎学術集会に参加し、HBO治療への理解を深め、基礎実験に必要な意見交換を行うために第53回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会に参加し、RNS阻害による血管新生阻害を確認する実験を施行するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高気圧酸素治療HBOを施行したラット腓腹筋を採取し凍結切片を作成し、損傷3,5,7,9日後の血管新生を調査。正常血管周囲に存在する血管平滑筋細胞を特異的に染色するαSMAと血管内皮細胞やミクログリア細胞を特異的に染色するトマトレクチンを用いて未熟血管数、正常血管数の比較を行いHBO群において未熟血管数は損傷3日後に、成熟血管数は損傷5,7日後に有意に増加していた。そのためHBOが血管新生を促進することが分かった。また、損傷3時間、6時間、1日、3日後において採取した腓腹筋をホモジナイズし遠心分離器にかけ採取した上澄み液を用いてVEGFの蛋白量を測定するELISA解析を行った。結果NT群では損傷6時間後に、HBO群では損傷3時間後に有意に上昇していた。また血管内皮細胞の活性化を血管内皮細胞を染色するTie2と静止期以外を示すKi67を用いて染色したところHBO群で損傷1日後に有意に増加していた。そのためHBOはVEGFの増加を損傷3時間後に、血管内皮細胞の活性化を損傷1日後に、血管新生を損傷3~7日後に促進することが分かった。またVEGFを増加させる経路の一つとしてHBOで増加する活性酸素腫ROS,活性窒素腫RNSによる経路が考えられたためROSとRNSを阻害するNACとRNSのみ阻害するLNAMEを用いて阻害した場合の血管新生についてαSMAを用いて調査した。その結果NAC,LNAME阻害後HBOを施行した群ではHBOによる血管新生促進効果が阻害されていた。そのためNAC,LNAMEともに阻害されるRNSが血管新生にはより重要であることがわかり、またHBOはRNSをトリガーとして血管新生を促進している可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
現在マイクロフィルによる血管新生はうまくいっていないためバリウムによる血管新生を行い評価をしている。しかし、心臓からの注入では血管造影にムラがあるので今後は大腿動脈より注入する方法を行う予定である。血管造影が成功するなら血管造影後に切片を作成し、視覚的に血管新生している血管とその周囲に存在する活性化した血管内皮細胞や未熟血管細胞をとらえていきたいと思う。また、RNS阻害による血管内皮細胞の活性化やVEGFの増加について検討し、血管新生についてもレクチン、ラミニンによって未熟血管や成熟血管はどのような影響を受けるのか検討した位。また、血管新生は筋再生に不可欠であるため、RNS阻害が血管新生のみならず筋再生に影響している可能性も十分にある。そのためRNS阻害+HBO施行群での再生筋線維数や筋力測定を行い評価することで筋損傷後の筋回復過程に血管新生が関与しているのかどうかを探り、関与しているのならRNSが早期に増えることからも早期のHBO治療こそ重要であると考えられるので、早期に1回のみ施行したHBOでは血管新生や筋再生が促進されるのかどうかを検討し、HBO治療プロトコールの一助となるように研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
可能な限り消耗したが、必要物品でこれ以上購入できるものがなかったため余る形となってしまった。
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