研究課題/領域番号 |
18K16618
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅井 秀司 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00770893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腱 / 変性 / ヒアルロン酸 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
腱は修復能に乏しい組織であり、外傷や酷使により損傷すると元の状態まで回復することは困難であり、加齢とともに軟骨化生や異所性骨化などの変性を生じやすくなる。今のところ変性した腱に対する根本的な治療法はないため、腱において内因性の修復能を高め、損傷の治癒を促進するとともに変性を予防する新たな治療法の開発は急務である。研究代表者は過去の研究において、p38 MAPK阻害剤がマウスのアキレス腱損傷部に生じる軟骨化生と異所性骨化を抑制すること、損傷腱由来間葉系幹細胞は腱の修復と変性の両方に直接関与すること、さらに損傷腱由来間葉系幹細胞にはヒアルロン酸レセプターであるCD44が発現していることなどを示した。そこで、本研究では「ヒアルロン酸は腱損傷部に誘導される間葉系幹細胞においてCD44を介してMAPKのリン酸化を抑制し、腱損傷後の軟骨化生を抑制するとともに腱の修復を促進する」という仮説を立て、腱に対するヒアルロン酸の変性予防効果と細胞内情報伝達機構を検討する。 2018年度は、損傷腱由来間葉系幹細胞の分化能に対するヒアルロン酸の作用をin vitroで検討した。CD-1マウスのアキレス腱損傷部から単離した損傷腱由来間葉系幹細胞をmicro mass cultureにより軟骨細胞へ分化誘導し、ヒアルロン酸もしくはvehicleで処理した。細胞染色により、ヒアルロン酸処理群で軟骨分化が抑制される傾向にあることを確認した。今後はサンプル数を増やし、統計解析を行う予定である。また同様に、損傷腱由来間葉系幹細胞の腱分化に対するヒアルロン酸の作用に関しても実験中である。2018年度の研究成果は本研究の根幹をなし、in vivo実験も含めた今後の研究につながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物の苦痛を考慮し、in vitroにおける実験を優先して行った。本研究課題の進捗がやや遅れている主な原因は、損傷腱由来間葉系幹細胞の軟骨分化に対するヒアルロン酸の効果を評価する実験系を確立するのに時間を要したことである。具体的にはmicro mass cultureした損傷腱由来間葉系幹細胞をヒアルロン酸で処理すると、細胞が培養プレートから剥がれてしまう問題が生じた。その問題に対して、ヒアルロン酸の濃度を変更したり、培養プレートのコーティング法を工夫したりすることにより対応した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度のin vitroにおける実験により、ヒアルロン酸が損傷腱由来間葉系幹細胞の軟骨分化を抑制する可能性が示唆された。そこで、今後は当初の計画通り①in vivoでヒアルロン酸が腱損傷部の軟骨化生を抑制し腱の修復を促進するか、②in vitroでヒアルロン酸が損傷腱由来間葉系幹細胞においてMAPKのリン酸化を抑制し軟骨分化を抑制するかを検討する予定である。①を検討するため、CD1マウスのアキレス腱を切断部にヒアルロン酸を投与し、アキレス腱損傷部における軟骨化生、異所性骨化、腱修復の程度を組織学的およびμCT検査により定量的に評価する。また、②を検討するため、損傷腱由来間葉系幹細胞にヒアルロン酸を添加しMAPKのリン酸化を評価し、さらにヒアルロン酸レセプターであるCD44を阻害し、ヒアルロン酸のMAPKリン酸化に対する作用および軟骨分化に対する作用を評価する。
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