研究実績の概要 |
腱は修復能に乏しく損傷すると元の状態まで回復することは困難であり, 加齢とともに軟骨化生や異所性骨化などの変性を生じやすくなる. 過去の研究結果をもとに, 本研究では 「ヒアルロン酸は腱損傷部に誘導される間葉系幹細胞においてヒアルロン酸レセプターCD44を介してMAPKのリン酸化を抑制し, 腱損傷後の軟骨化生を抑制するとともに腱の修復を促進する」 という仮説を立てた. 損傷腱に対するヒアルロン酸の変性予防効果と細胞内情報伝達機構を検討し以下の結果を得た. ① CD-1マウスのアキレス腱損傷部から単離した損傷腱由来間葉系幹細胞をmicro mass cultureにより軟骨細胞へ分化誘導し, ヒアルロン酸で処理した. アルシアンブルー染色のintegrated densityはヒアルロン酸の濃度に依存して減少した. また, 軟骨分化マーカーであるaggrecan, Sox9, II型コラーゲンの遺伝子発現量はヒアルロン酸の濃度に依存して減少した. 一方で腱分化マーカーであるMohawk, I型コラーゲンの遺伝子発現量はヒアルロン酸の濃度に依存して増加した. これらのヒアルロン酸の作用は抗CD44抗体により減弱せず, 抗CD44抗体単独でも軟骨分化マーカーの遺伝子発現量は減少した. ② ヒアルロン酸合成阻害剤4-メチルウンベリフェロン (4-MU) を用いて同様の実験を行った. その結果, aggrecanの遺伝子発現量はヒアルロン酸の濃度に依存して増加したが, Mohawkの遺伝子発現量に有意な変化は認められなかった. この結果は, 損傷腱由来間葉系幹細胞におけるヒアルロン酸の軟骨分化抑制作用を裏付けるものである. ③ In vivo実験として, アキレス腱損傷モデルマウスにヒアルロン酸の局所投与および4-MUの腹腔内投与を行っている.
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