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2018 年度 実施状況報告書

3D積層プリント技術と整復シミュレーションの融合による上肢骨折個別化治療の実現

研究課題

研究課題/領域番号 18K16619
研究機関名古屋大学

研究代表者

米田 英正  名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00735946)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード骨折治療 / 個別化医療 / CFRP / 3Dプリンティング / 有限要素解析
研究実績の概要

ロッキングプレートを用いた骨幹端骨折治療における術後の合併症は多く報告されており,その解決は早期に求められる課題である。これまでに私は術者の技術に依存しない安全で確実な手術方法の確立を目指し研究を行う中で,骨折治療において骨幹端部骨形状の解剖学的多様性が原因で多くの合併症が生じており,単一規格の内固定材では骨折治療が困難であることを明らかにした。この解決方法として本研究では骨折治療に対しての個別化治療の導入を提案した。この研究は以下3つのプロセスを遂行することを目標として研究を開始した。①3D-CAD上での骨折の整復(骨折整復シミュレーターの作成),3D-CAD上での内固定材の設置シミュレーション、3Dプリンタによるインプラント出力、②インプラントの有限要素解析を用いた力学的合理性についての妥当性の検証、③近年開発されたCFRP(carbon fiber reinforced polymer)の積層技術を導入した3Dプリントによるインプラント作成技術の検証。初年度は項目①②を中心に研究を進めた。
①骨折治療シミュレーターによる整復補助と内固定材のデザイン:骨折の整復,内固定材の合理的な設置を3D-CAD上でデザインした。このデザインを合理的に進めるため骨折治療シミュレーターを作成した。saw bone骨モデルのCTを作成し、その形状にあわせたインプラントを3D-CAD上でデザインし、3Dプリンタで作成し、骨モデルに合致したインプラントとして出力できるか検証した。
②デザインしたインプラントの有限要素解析:個々の骨形態に応じてインプラントをデザインするために力学的妥当性の検証は必須の過程と考える。有限要素解析を行い、個別化インプラントごとに力学的妥当性が検証できているかを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

市販の3D-CADソフトウェアであるRhionoceros, Fusion 360を用いて骨折治療シミュレーターとした。骨折の3DモデルをCT画像から作成し、骨片ごとに別々のパーツとして認識させることは実現できた。骨折の粉砕の少ないものでは安定した精度でモデルを作成することが可能なことは確認した。しかし高度に粉砕する骨折では、ときにモデルの精度が悪くなったり骨折線が認識できず骨片の分離に苦労することがあった。このモデリングは既存の骨折の患者さんのCTデータを用いて行ったが、撮影条件によりモデリングの精度が大きく変化することがわかったため、継続してこの部分は研究を進め、粉砕骨折を中心に骨片の認識精度が安定する撮影条件を検索することとする。
3D-CAD上でのプレートの変形は可能であり、数例について3Dプリンタを用いて樹脂製のプレートを出力できることを確認した。変形についてはCADソフトの操作のみで容易にできるが、どの部位を変形させるかを一定させることが必要であることが判明した。この部分については2019年度に発売されるRhinocerosのアップグレードパッケージを利用し解析を進めるため、予算の一部を次年度使用として移行した。
有限要素解析については2019年2月に購入したソフトウェアを用いて検証を開始した。いずれはCFRPインプラントを想定した有限要素解析とする予定であるが、はじめは骨と金属製インプラントを用いた有限要素解析として研究を開始した。先行研究を参考にしながら解析も始め、骨ー金属製インプラントでの解析は問題なく施行できた。しかし、この過程で気付いたのは皮質骨の厚さには個人差があり、また骨粗鬆の状態に応じた物性値などを考慮した研究はほとんど存在しないことである。骨粗鬆の状態を反映した研究へと切り替えるべく、次年度はCT値を含めた解析モデルを導入することを計画した。

今後の研究の推進方策

1年度目の研究で残った課題は、「①粉砕骨折のモデル化における指摘CT撮影条件の決定」、「②個別化インプラントの変形位置の決定」、「③CT値を用いた骨粗鬆骨における有限要素解析」である。①についてはおそらく撮影条件におけるスライス厚を小さくすることをはじめ、線量や関心領域におけるCT値の閾値の調整が必要であり、放射線技師と相談しながら至適条件を検索することを計画している。②については通常の骨モデルを数十例程度用意し、変化の大きい部分を数学モデルを用いて明らかにすることが必要と思われた。形態の個体差が生じる部分をプレートの可変部位として規定し、多くの骨モデルに可変プレートが合致するか3Dプリンタで出力したインプラントを用いて確認する。③については、以前購入した3Dモデル作成ソフトウェアにプラグインを導入することで、CT値に応じた物性値を割り当てて有限要素解析を進める。この後、CFRPの物性値も利用していきながら、CFRPー骨折における有限要素解析の実現を目指すこととする。
これらに加え、本研究の最後の出口である3DプリントによるCFRPインプラントの実現性を確認する。高額なCFRP用の3Dプリンタは本研究費のみでの購入が困難であるが、材料工学の専門家と手を組み共同研究を行うことでCFRPの3Dプリントの実現を目指すこととする。

次年度使用額が生じた理由

3D-CADソフトウェア(Rhionceros)のバージョンアップパッケージ購入用として計画していた。ソフトウェアのバージョンアップのリリースが遅れており、2019年夏に発売が予定されているので、次年度使用の予算として移行することとした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Limitations of fixation with single volar locking plates in marginal fractures of the distal radius2018

    • 著者名/発表者名
      Hidemasa Yoneda, Shigeru Kurimoto, Katsuyuki Iwatsuki, Michiro Yamamoto, Masahiro Tatebe, Hitoshi Hirata
    • 学会等名
      Federation of European Societies for Surgery of the Hand
    • 国際学会
  • [学会発表] The Limitation of the Fixation of the Tiny Fragment of the Lunate Fossa with a Single Volar Locking Plate in the Distal Radius Marginal Fractures2018

    • 著者名/発表者名
      Hidemasa Yoneda, Shigeru Kurimoto, Katsuyuki Iwatsuki, Michiro Yamamoto, Masahiro Tatebe, Hitoshi Hirata
    • 学会等名
      Annual Meeting of the American Society for Surgery of the Hand
    • 国際学会
  • [学会発表] 手関節側面レントゲン像におけるpisoscaphoid distanceの有用性の検討2018

    • 著者名/発表者名
      米田 英正,建部 将広,栗本 秀,岩月 克之,山本 美知郎,大西 哲朗,西塚 隆伸,森田 哲正,平田 仁
    • 学会等名
      日本手外科学会学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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