研究課題/領域番号 |
18K16621
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 和克 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00706294)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脊椎手術 / 脊髄モニタリング / 多施設前向き研究 / 脊髄損傷 |
研究実績の概要 |
これまでに 脊椎脊髄病学会モニタリング委員会では、モニタリングの実態を把握すべく、前向き多施設調査を行っている。アラームポイントは振幅の70%低下と定めており、本アラームポイントの妥当性について調査した。2017-2018年度 日本脊椎脊髄病学会モニタリングワーキング委員会13施設でTc-MEPsを併用した高リスク脊椎手術949例を調査した。疾患の内訳は、髄内/髄外脊髄腫瘍:77例/254例、頸椎/胸椎OPLL:214例/59例、脊椎側弯症:345例であり、主な手術責任高位は頸椎304例、胸椎381例、胸腰椎移行部242例、腰椎121例 (重複あり)であった。手術開始時にいずれかの波形導出不良を認めたのは209例(22%)で、疾患別の発生率は髄内/髄外脊髄腫瘍:21%(16例)/25%(63例)、頸椎/胸椎OPLL:26%(55例)/39%(23例)、脊椎側弯症:15%(52例)であった。一方で全筋波形導出不良を認めたのは32例(3%)で、疾患別の発生率は髄内/髄外脊髄腫瘍:5%(4例)/3%(7例)、頸椎/胸椎OPLL:4%(8例)/19%(11例)、脊椎側弯症:1%(2例)と、いずれも胸椎OPLLで有意に高かった(p<0.05)。術前MMT3以下の高度麻痺をみとめた場合の全筋波形導出不良は30%(32例/105例)にみとめ、高位別の発生率は、頸椎15%(6例/39例)・胸椎61%(23例/38例)・胸腰椎13%(3例/24例)・腰椎0%(0例/4例)と胸椎で有意に多かった (p<0.01)。導出不能例の術後麻痺悪化は38%(12/32)にみとめた。胸椎OPLLで、高位別ではとくに胸椎手術で有意に波形導出不良をみとめていた。以上により、従来から提唱されているアラームポイント(振幅70%低下)の有用性が示せた。今後、さらなるモニタリング条件の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国多施設前向き調査による疾患毎の脊髄モニタリング検討を行った。手術開始時にいずれかの波形導出不良を認めたのは22%で、疾患別の発生率は髄内/髄外脊髄腫瘍:21%/25%、頸椎/胸椎OPLL:26%/39%、脊椎側弯症:15%であった。一方で全筋波形導出不良を認めたのは3%で、疾患別の発生率は髄内/髄外脊髄腫瘍:5%/3%、頸椎/胸椎OPLL:4%/19%、脊椎側弯症:1%と、いずれも胸椎OPLLで有意に高かった(p<0.05)。現在までに、徐々に目的達成について進行している。
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今後の研究の推進方策 |
全国多施設における麻酔(導入時・維持麻酔時の筋弛緩剤を含む麻酔薬量)・刺激条件(刺激強度・刺激頻度)を一定にすることで、同一条件での手術体制を確立する。2019年までの前向きデータにおけるモニタリング症例の調査・集計・解析を行い、新しいアラームポイントの策定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国多施設における2019年までの前向きデータ調査は終わったもののデータ回収作業の遅れから、集計・解析を次年度に行うことになった。集計・解析に際して、情報収集のための旅費・人件費・印刷費などを必要とする。
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