研究課題/領域番号 |
18K16622
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河井 利之 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (80806828)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多孔体 / 骨新生 / 血管新生 / 骨欠損 / 三次元印刷 |
研究実績の概要 |
三次元印刷技術を用いて、血管ネットワーク形成を促すポリカプロラクトン多孔体を作成した。多孔体は外径4mm長さ8mmの円柱状で、中央に血管束を通すための直径2mmのトンネル構造をもたせた。ラットの大腿骨に8mmのcritical sized defectを作成し、骨欠損部には作成した多孔体を留置し、superficial epigastric arteryを多孔体中央チャネルに挿入、術後4,8週でレントゲン評価、術後8週で腹部大動脈からMicrofilを注入し血管造影による血管形成量を調査をおこなった。マイクロCT撮影による骨形成量評価も行うこととした。CT撮影後には樹脂に包埋して切り出したのちにVan Gieson pichrofucsin, stevenel's blue 染色を行い多孔体内への骨、血管進入の組織学的評価を行った。骨欠損に多孔体のみを留置したGroup1と、多孔体にsuperficial epigastric arteryを挿入したGroup2の比較を行うこととした。術後4週での骨癒合率はGroup1で0%、Group2で17%であった。術後8週ではそれぞれ0%、25%であった。CTで評価した術後8週の骨形成量はGroup1に比してGroup2の方が有意に骨形成量が多い結果であった。また、Group2の骨形成量は無治療のラット大腿骨の骨量と同等であった。血管造影検査においてもGroup2でGroup1よりも有意に血管量が多いという結果であった。Group2の血管量は無治療ラット大腿骨の血管量よりも多かった。多孔体中央トンネル内のみについて血管形成量を評価したところ、Group1とGroup2血管形成量の差はより顕著なものとなっていた。作成した組織標本においてもGroup2では旺盛な多孔体での血管進入が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回使用しているラット骨欠損モデルは以前にも経験があったため、動物実験の開始はスムーズに行うことができた。多孔体作成についても過去に同じポリカプロラクトン素材を使用した三次元印刷の経験がありコンピュータデータ作成から印刷までのプロセスを遅滞なく行うことができた。 血管造影については初期にはシリンジポンプを使用した重量式の注入を行っていたが血管抵抗のばらつきのため造影効果にむらがでやすいことが判明した。時間当たりの量を計測しながらの徒手注入方式にて数例やり直す必要が生じたためその点では追加的な時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、多孔体にBMP2、VEGFなどの成長因子を添付してラット大腿骨欠損部での骨形成・血管新生への影響を観察する予定である。 現在までのところラット大腿骨での多孔体+superficial epigastric artery留置群で良好な血流流入がみられ骨形成も良好であるが、ラット大腿モデルではサイズ制約のため多孔体からの血流流出路の作成が困難であるという問題があった。そこで、ビーグル犬などの大動物を用いて血管流入路と流出路の両方を作成した多孔体を使用したモデルでの評価が望ましいと考える。この新たなモデルではsuperficial epigastric arteryとveinのloopを作成し、それを血管流入-流出路とする多孔体評価を行うことを目的とする。ビーグル犬の大腿にcritical size bone defectを作成し、血管loop付き多孔体を留置を行う。術後8週で血管造影を行い、骨欠損部を含む大腿中央1/3を摘出しCT撮影を行うことで血管+新生骨の量を測定する。また、その後EDTAによる脱灰を経て再度CT撮影を行うことで血管、骨それぞれの量を独立に評価が可能となる。 これまでに行ったラット大腿でのartery挿入モデルにおいても多孔体内に放射状に構築された血管を確認することができたが、ビーグル犬のサイズであれば流入動脈と流出静脈を多孔体に逢着するモデルの作成が可能となる。多孔体中央トンネルに血管loopを挿入するモデルの他に、流入路流出路逢着モデルにおいても血管・骨新生評価を行う方針である。
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