明細胞肉腫は若年成人の四肢に後発する希少がんで、細胞膜にアミノ酸輸送体L-type Amino Acid Transporter1 (LAT1)を発現していることが報告されている。本研究では、明細胞肉腫に対してLAT1を治療標的とした新たな治療法開発を目的としている。 平成30年度は、LAT1選択的阻害剤JPH203の抗腫瘍効果について検討を行い、JPH203はドキソルビシン投与において増感作用が示唆された。 平成31年度は、JPH203・ドキソルビシン併用により、アポトーシス活性がドキソルビシン単独投与群と比較して有意に増加することを確認した。続いて、JPH203との併用薬剤の探索のため標準阻害剤キットを用いてJPH203との相乗効果を示す有用な組み合わせを網羅的に検討し、併用により相乗効果を認める可能性のある薬剤の候補を得た。さらに、JPH203の代謝に対する影響の解析のために、メタボローム解析(GC/MS法)を行い、JPH203処理により、細胞内のロイシンの低下とグルタミンの増加、解糖系代謝産物の低下が確認された。以上から、JPH203はヒト明細胞肉腫株において代謝を抑制することにより、抗がん剤に対する増感効果とアポトーシス誘導効果を認める可能性が考えられた。 令和2年度は、ドキソルビシンにJPH203を併用した場合の遺伝子発現の変化を検討するため、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子解析を行った。エンリッチメント解析において有意な差異は検出されなかったが、複数の個々の遺伝子発現には有意差を認めた。 令和3年度は、先に実施したRNAシークエンスの結果の追加解析を行い、標準阻害剤キットを用いたスクリーニングの結果との整合性について検討を行った。得られた結果は、2022年度の第55回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会にて発表予定である。
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