研究実績の概要 |
骨腫瘍や骨髄炎の治療において生じた巨大骨欠損には,力学的強度不足を補うような再建や補填が必要になる.これまで,骨髄未分化幹細胞とバイオマテリアルとを組み合わせて移植する手法が試みられているが,管理やコストの面で臨床応用にはハードルが高い.最近,近畿大学の森本らのグループは,幹細胞の分化誘導を促進する細胞低接着性コラーゲン(Low Adhesive Scaffold Collagen;LASCol,特許取得済)を開発し,骨補填材としての新しい可能性を示した.そこで,本研究では,ラット大腿骨欠損での高密度LASCol骨補填材の骨再生能を検証し,さらに薬剤-DDS(LASCol)としての可能性を調べる.本研究の目的は,幹細胞移植を伴わないLASColを用いた自家幹細胞の活性化による骨再生の学術的な基盤を構築し,臨床応用を目指すことである. 細胞実験ではラット骨髄間質細胞をLASColコート、アテロコラーゲン(AC)コート、非コート上にそれぞれ播種し、骨芽細胞分化誘導因子(Osterix、 Runx2、 Atf4、 Alpl、 Bglap、 OCN)の発現をReal-time PCR法で検討したところ、LASColコート上で培養したOsterix、 Runx2、Alpl、Bglap、OCNのmRNA発現レベルは、ACコートおよび非コート培養の両者と比較して有意に増加した.次に動物実験としてラット大腿骨1mm骨欠損モデルを作成し、欠損骨形状と同サイズの高密度LASColスポンジを移植した個体(LASCol群)と、無治療の個体(対照群)につき骨再生を術後4週でμCT、組織学的に評価した。いずれもLASCol群で有意に骨再生が進行していた。 LASColは骨折や骨腫瘍、骨髄炎の治療において生じた巨大骨欠損に対する力学的強度不足を補う再建法として、広く使用される可能性がある。
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