体内時計を構成する時計遺伝子の一つであるCRY2の遺伝子発現がヒト変形性関節症(OA)軟骨で有意に低下していることが報告されている。しかし、軟骨代謝においてCRYがどのような役割を持つかは明らかではない。これまでにCry1およびcry2の遺伝子発現が減少することで、Runx2やAdamts4などのOA関連遺伝子の発現が増加していたとともに、Cry1・Cry2ノックアウトマウスでは脛骨近位部成長軟骨板において静止軟骨細胞層の減少および軟骨肥大化の亢進とRunx2免疫組織化学像での陽性細胞の増加を認めた。これらからCryは軟骨肥大化の抑制や炎症の抑制を通じて、軟骨代謝機構および骨の成長を制御している可能性があると考えている。一方、OAは年齢とともに発症率が上昇する疾患であることから、6か月齢以下の若齢マウス及び12か月齢を超えた高齢マウスから大腿骨を採取した。この際、体内時計の中でCRYとともに負の制御因子と知られるPER2に発光レポーターを導入した遺伝子改変マウスを用いた。若齢マウスと高齢マウスから採取した大腿骨の発光量を経時的に測定したところ、高齢マウスから採取した大腿骨では発光量が減少していた。さらに発光リズムの振幅が減少していたことが明らかになった。このことは、PERとともにCRYが減少している可能性があることを意味していると考えており、CRYは変形性関節症に関して重要な役割をもつ可能性がある。
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