研究実績の概要 |
腱板断裂は、しばしば疼痛の慢性化を引き起こすが、その疼痛機序に関しては未だ明らかになっていない。慢性疼痛メカニズムを検討するために腱板断裂後に腱板断裂部に長期にわたり持続的に発現する炎症性サイトカイン、疼痛関連因子神経ペプチドの探索とその制御機構を検討した。9週齢Sprague-Dawley(SD)雄性ラット63匹を用いた。棘上筋と棘下筋を切離し、腱板修復モデルを作製した。術後1日、3日、7日、14日、28日、56日において肉眼的に修復を確認後、修復部の組織を採取し、Real-time PCR法を用いてIL-1β, TNF-α, IL-6, COX-2, NGFの発現量を比較検討した。また術後1日と14日はNGFの発現についてELISA法および組織学的な検討を行った。また、術後7日後の組織から腱板由来細胞を採取し、TNF-αによるNGF発現制御を検討した。健側から採取した組織をコントロールとした。一元配置分散分析とFisherの多重比較を用いて統計学的検討を行った。IL-1β, IL-6, COX-2の発現は術後1日目にコントロールと比較し有意に上昇したが、3日目以降は低下した。TNF-α, NGFは術後1日目より上昇し、56日においてもmRNA、タンパクレベルで発現の上昇が維持された。で。また、TNF-a刺激により腱板由来細胞細胞におけるNGFの発現が上昇した。ラットの腱板断裂モデルにおいて断裂後早期にIL-1β, IL-6, COX-2の一過性の発現上昇を認めたが、その後減弱した。一方、TNF-α, NGFの発現は術後56日まで維持されていた。また、TNF-a刺激によりNGFの発現が上昇したことから、TNF-αを介したNGF産生の誘導が腱板断裂患者の慢性疼痛メカニズムに関与しているかもしれない。
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