研究実績の概要 |
症候性腱板断裂の疼痛関連因子に関する検討として、ラットを用いた動物実験とヒト滑膜を用いた研究を実施している。現在動物実験の成果として、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2) は断裂モデル作成後漸減し14日以降有意に低下しているのに対し、TNF-alpha, NGFはモデル作成後56日まで持続的に発現していることをPCRにて確認した。(Nagura, Kenmoku, et al. JSES, 2018) COX-2および神経成長因子(NGF)についてヒト滑膜においても反復性肩関節脱臼症例よりも腱板断裂の滑膜において有意に上昇していることを確認した。(田澤、見目ら.第46回日本肩関節学会にて発表、論文作成中) 変形性股関節症の滑膜と比べ、腱板断裂の滑膜ではCOX-2が有意に低く(Kenmoku, et al.Open J Orthop, 2019)、NGFに関してはCOX-2とは別経路でインターロイキン-1ベータ(IL-1beta)刺激で上昇していることを確認してた。(Nagura, Kenmoku, et al. JOS, 2018) また、ラットモデルにおいてApelinが持続的に上昇しており、ヒト滑膜においても反復性肩関節脱臼症例よりも腱板断裂の滑膜において有意に上昇していることを確認した。こちらはTNF-alpha刺激によってApelinが上昇することをラットおよびひと滑膜で確認した。(中脇、見目ら.第46回日本肩関節学会にて発表、Best abstract16に選出)以上から症候性腱板断裂の疼痛発現機序は変形性関節症で認められるようなアラキドン酸カスケードによるプロスタグランジンとは別な機序で疼痛が持続しており、特にNGFや神経ペプチドの関連性が高いものと考えられた。
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