研究実績の概要 |
変形性関節症(OA)では滑膜病変と痛みが密接に関連していることが示されている。本研究ではこのリンクを関節液中に存在するエクソソームに着目して解明することを試みた。本研究では疼痛の強い時期とその後に疼痛が軽快した時期の2時点で同一関節から採取された関節液を解析に用いた。これらの関節液からmiRNAを抽出してqPCRパネルによる半網羅的な定量解析を行い、OAの痛みに関連する可能性のあるmiRNAを選択、つぎに人工関節置換が行われた末期OA膝関節より滑膜組織を採取してmRNAとmiRNAを同時に抽出し、選択されたmiRNAと痛みに関連する因子の遺伝子発現のレベルを検討することによって滑膜性疼痛と関連するmiRNAを見出すこととした。 研究初年度から第二年度にかけて、8組のP-OAとNP-OAの関節液検体のペア(合計16検体)についてエクソソームの回収とmiRNAの抽出を行い、これをPCRパネル(miScript miRNA PCR Array、Qiagen社)で解析して関節液中に存在する主要なmiRNAの半網羅的・定量的解析を行った。その結果、5種のmiRNA(miR-21, miR-128, miR-146b, miR-218a, miR-302d)の存在量が、いずれも疼痛が強い時期の関節液中で有意に多いことを見出した。 研究第二年度と第三年度には32例の末期OA関節から滑膜組織を採取してmRNAとmiRNAを抽出し、miRNAとmRNAの発現レベルの相関を検討した。その結果、上記5種のmiRNAのうちmiR-21がOA関節の痛みの発現に深く関与するnerve growth factor(NGF)の遺伝子発現レベルと有意の正の相関を示すことが明らかとなった。この結果からOA滑膜ではmiR-21がNGFの発現を介して痛みの発現に関連している可能性があると考えられた。
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