研究課題/領域番号 |
18K16639
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
田宮 大也 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科 副部長 (70811686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 淡明細胞肉腫 / SHARPIN / PRMT5 |
研究実績の概要 |
前年度中に淡明細胞肉腫株でのSHARPINおよびPRMT5ノックダウンや融合遺伝子EWS-ATF1の過剰発現系の実験を立ち上げ評価を行った。その結果SHARPINおよびPRMT5のノックダウンでは細胞増殖に影響は見られず、以前我々が発見した悪性黒色腫でのMITFへの影響は確認できなかった。以上からはSHARPINおよびPRMT5の機能は悪性黒色腫と淡明細胞肉腫では大きく異なることが分かった。 EWS-ATF1の下流にMITFが存在することが以前の論文からわかっているためEWS-ATF1によるMITFへの発現制御の影響が大きいと考えられた。そのEWS-ATF1の機能を解析するため淡明細胞肉腫株に過剰発現しその結合タンパクを解析しようと試みたが淡明細胞肉腫株への過剰発現が困難であることおよび過剰発現できた細胞は何らかの原因で細胞死を起こしてしまい実験を進めることが困難であった。 一方で各肉腫細胞株を用いて遺伝子発現の定量を行ったところ淡明細胞肉腫以外の細胞株では認められなかったPGC1αの発現が淡明細胞肉腫でのみ高発現であることが判明した。PGC1αはMITFの下流にあることが知られ抗酸化作用をもつ遺伝子発現をコントロールしている。現段階ではPGC1αの高発現が淡明細胞肉腫の抗がん剤抵抗性に寄与しているのではないかという仮説で実験を進めている。 現在鉄依存性細胞死フェロトーシスを試しておりある一定の効果を得られている。SHARPINノックダウンにてフェロトーシスの感受性が低下する結果が出ておりSHARPINがいかなる機序でフェロトーシスに関与するのかを現在検討中でありこの解析を通じて新たな抗がん剤としてのターゲットを明らかにできる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SHARPINおよびPRMT5が淡明細胞肉腫に対して与える影響を確認することはできなかった。またEWS-ATF1の機能を結合タンパク質の解析を通じて明らかにしたかったが実験系がうまく進められず当初の計画を変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
淡明細胞肉腫株のみでなく様々な肉腫細胞株を所持しておりスクリーニングを行っておりその中では滑膜肉腫株でフェロトーシスの感受性が高いことが示されている。今後淡明細胞肉腫株にとどまらずその他の肉腫細胞株にも焦点をあてSHARPINの役割を解明するとともに新規抗がん剤への発展を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初EWS-ATF1との結合タンパクと同定するため淡明細胞肉腫への過剰発現および免疫沈降、質量分析と進める予定であったが、先述のごとくEWS-ATF1過剰発現にて細胞のviabilityが失われ実験を進めることができなかった。このため使用額に差が生じた。次年度は動物実験を計画中であり細胞レベルの実験よりも研究費を要する見込みである。また論文作成費なども必要になってくるため支出は今年度より増加すると考えられる。
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