研究課題/領域番号 |
18K16640
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
森口 悠 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部), その他部局等, 医師 (00627797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 椎間板 / 線維輪 / 再生医療 / 胚性幹細胞 / 組織再生工学 / 軟骨 / 多能性幹細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は組織再生工学技術により胚性幹細胞より作成された細胞・マトリックス集合体(embryonic stem cell-derived tissue engineered construct, ES-TEC) による線維輪の修復効果を検証することである。ES-TECの作成には胚性幹細胞から間葉系幹細胞、間葉的幹細胞から人工組織(TEC)という段階的分化誘導を用いて行い、それぞれの段階の機能を評価した結果、細胞の分化段階、保存状況や期間が機能に影響を与えることが示唆された。予備実験として行った動物移植データの解析から、移植した人工組織の安定性と生着状態を組織学的に評価した。これにより椎間板直上の軟部組織の修復状態が移植組織の安定性に重要な影響を与えると判明した。移植実験の際の手術手技による誤差を最小化するために従来の正中皮切・正中筋層展開の術式から皮膚・筋層の弁状同時展開を採用する手術法を考案した。これら知見は脊椎手術でのアプローチ法や手術侵襲の程度が治療成績に影響を与え得るため最小侵襲手術の重要性が認識されつつ昨今において、再生医療ツールによる治療体系においてもその成績に大きな影響を与えることを示している。また、対照群の間葉系幹細胞由来の人工組織としては脂肪組織からのTECを作成し、これを移植した動物データより髄核保護作用と椎間板全体の変性の予防効果を確認した。椎間板の健全性を示す椎間板高や機能性を反映する力学特性においても幹細胞を用いた人工組織による治療でそれらが維持されることを確認した。また動物実験での経時的定量評価として、3次元画像システムボリュームアナライザー(Synapse Vincent, Fuji Film)を用いて修復された骨軟骨組織の密度と体積を測定する手法を検討し、精度と誤差の評価から同手法を採用することを決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
諸般の事情があるが、中でも胚性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞の軟骨分化能や増殖能、生着能や物理学的特性は保存状態や期間、再培養時の播種条件によって大きな影響を受けることが判明し、移植する細胞の評価と選定に多くの時間を要した。また予定していた動物実験施設での改修工事のため飼育数が制限される状況であったため実験施設条件の再考を要することとなり、研究の進捗に影響を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
胚性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞は軟骨分化能が高いものを選択的に使用し動物実験を終了し解析を完遂する。1日に手術する件数と同時に飼育する動物の数を少し増やして研究を加速的に進める。当該年度でCTを用いた修復組織の経時的定量評価を確立し同一個体から進行形のデータを得られるため、動物屠殺後の解析も短縮することが可能となり、研究進捗における効率は加速すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の進捗が遅れているため当該年度での経費が少額となり次年度での使用を要することとなった。その理由として諸般の事情があるが、大きな要因としては胚性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞の質が保存状態や期間、再培養時の播種条件によって影響を受けることが判明し、移植する細胞の評価と選定に多くの時間を要したことが挙げられる。また、予定していた動物実験施設での改修工事のため飼育数が制限される状況であったため実験施設条件の再考を要したことも研究の進捗に影響を与えた。 今後の計画としては胚性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞は軟骨分化能が高いものを選択的に使用し動物実験を終了し解析を完遂する。1日に手術する件数と同時に飼育する動物の数を少し増やして研究を加速的に進める。当該年度でCTを用いた修復組織の経時的定量評価を確立し同一個体から進行形のデータを得られるため、動物屠殺後の解析も短縮することが可能となり、研究進捗における効率は加速し、これら過程で予算の使用も適時化されていく。
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