研究実績の概要 |
近年、腸管免疫系が様々な疾患の発症に関わることが指摘されている。特に、腸管壁の粘膜固有層での樹状細胞、タイプ17ヘルパーT細胞と制御性T細胞のバランスが疾患発症や進行に影響を与えることが示唆されている。 本研究では、関節リウマチ(RA)の発症や再燃予防を目標として、マウスのコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルを用いて腸管免疫系と腸内細菌叢の解析を行った。CIAモデルを作成後に、CIAの発症前から発症後、寛解後、再燃後と経過を追って免疫細胞を回収した。回収後、ヘルパーT細胞マーカーとしてCD3, CD4、Th17細胞マーカーとしてRORγt、制御性T細胞マーカーとしてFoxp3を使用して染色した。染色後フローサイトメトリーを用いて動態と機能解析を行った。 さらに最終年度においては関節組織、血液を採取し、免疫組織学的評価、サイトカイン定量を行った。炎症性サイトカインの代表としてIL-6、 TNF-α、抗炎症性サイトカインであるIL-10さらにIL-17の解析をサイトカインビーズアレイ法で行った。また、便も随時回収し、IgAの定量と同時に次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢解析を行った。 免疫細胞、サイトカイン、腸内細菌叢も関節炎の発症、寛解、再燃とともに大きく変動した。特に初発時と再燃時では腸管免疫系の動態が異なることが示唆された。本結果により、将来的に便を回収、解析することによりRAの時期を予測することや初発時と再燃時において腸管免疫を修飾する治療法を変える必要があることが示唆された。
|