研究課題
申請者は、2種類の低分子化合物の組み合わせによる非常に簡便なプロトコルにより、recombinant proteinを用いた従来報告されている分化誘導法よりも、短期間で効率の良い誘導が可能なヒトiPS細胞の軟骨細胞への分化誘導法(以下、本誘導法を2 Compounds法 = 2C法と呼称する)を確立した。2C法はその経時的な発現解析から、発生学的にも極めて妥当な軟骨分化誘導法であることが分かっている。従って申請者は、①本誘導法の各分化段階の詳細な発現解析およびエピゲノム解析を行うことで、軟骨発生過程において重要な遺伝子群の探索を行うこと②本誘導法によるiPS由来軟骨細胞の組織成熟化の手法を確立することで、再生医療への応用を見据えた、従来法よりも安価でかつ短期間に安全な軟骨組織を作成すること、の2点を主な研究目的として研究を行ってきた。①については、申請者はあるシグナル因子Xに注目し、2C法の各分化段階においてChIP-seqを実施した。その結果、シグナル因子Xは各分化段階において、その各分化段階を規定する主要なマーカー遺伝子群のenhancer領域に結合し、分化の制御に直接的に関わっているという非常に興味深いデータを得ることができた。②については、スフェロイドを用いた分化誘導法の培養条件の最適化を始め、いくつかの立体培養の手法の条件検討を行っている段階である。現時点まででいくつかの培養条件においては、平面培養下と同等以上の軟骨分化マーカーの上昇を認めている。
2: おおむね順調に進展している
申請時に予定していた研究計画を概ね順調に実施できているため
「研究実績の概要」の①に記載した、「2C法の軟骨分化過程において重要な遺伝子群の探索」については、更に別のシグナルYに着目したChIP-seqを2C法の各段階で実施する計画である。また②に記載した「2C法により分化誘導したiPS由来軟骨細胞の組織成熟化の手法の確立」についても、立体培養の条件検討を引き続き行うとともに、小動物への移植実験も計画していく。
いくつかの実験試薬の購入を、実験状況の進行により次年度に見送ったため。
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