研究課題/領域番号 |
18K16647
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宇土 美於 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50783495)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 変形性関節症 |
研究実績の概要 |
運動器の障害が超高齢化社会に及ぼす影響は多大であり、変形性膝関節症はその代表疾患である。膝はメカニカルストレスの上昇に伴い、変性が進行することがしられており、ラットの前十字靭帯損傷モデルはメカニカルストレスにより誘発される変形性膝関節症モデルとして有用とされている。また、治療法においては骨髄刺激、自家軟骨移植および自己軟骨 細胞移植などの治療法があり、中でも間葉系幹細胞治療は、軟骨損傷の修復を改善する新規治療法として期待されている。しかし、治療法の開発という点では幹細胞治療の作用機序の解明は限定的である。今回我々はラット前十字靭帯損傷モデルに対し、異なる濃度の間葉系幹細胞を関節内注射し、疼痛評価、組織学的評価を行うことにより、間葉系幹細胞の軟骨再生能における容量の影響を確かめる。 方法:8週齢の雄Wistarラットを使用した。麻酔科に皮膚切開を置き、関節包を切開し、前十字靭帯を露出し、尖刃にて前十字靭帯を損傷した。断裂を視認と徒手的不安定性にて確認後閉創した。術後1、2、3週間後に、1万、10万、または100万間葉系幹細胞またはコントロールとして生理食塩水を膝関節に注射しました。術後12週間までの痛みの評価として、体重負荷分布改善率を計算しました。術後12週間後にOARSIスコアリングシステムを用いて組織学的検査を行った。 10万、または100万間葉系幹細胞を投与された群はコントロールと比較し有意にOARSIスコアの向上、変性予防効果を認めた。術後12週間後の1万および10万間葉系幹細胞投与グループと、術後6、8、10、および12週間後の100万間葉系幹細胞投与グループの体重負荷分布は、コントロールグループの有意に高く、痛みの改善を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画のうち、OAモデルに対し、MSCsを関節内に、12週における所見を下記の視点で評価・検討することを挙げている。A) OAモデルに対しMSCsを膝関節内に投与したさいの関節内変化の評価として肉眼的所見、組織所見から軟骨変性を評価し、MSCs投与の時期とその有効性について統計学的解析をおこなった。肉眼的所見でも変性予防効果を認めた。その後、パラフィン切片標本を作成し、SaO染色を行い、OARSI scoreを用いた評価にて変性予防効果を認めた。B) MSCsを炎症の生じている関節内に投与すると痛みはどうなるか。疼痛評価として行動解析Incapacitance testを行った。incapacitance testは荷重分析評価法の一つで、左右の荷重を計測し、左右の割合を解析する。疼痛がある下肢では荷重する割合が減少する。無拘束の状態での測定が可能で、侵害刺激への反応を見る行動解析とは違い、平常時の疼痛が測定できる。MSCs投与群では疼痛回避行動が減少し、疼痛抑制効果があった。 研究計画では、脊髄、傍脊髄神経節(DRG)の免疫組織学的評価の予定であった。そのため脊髄後角の組織標本の作成等が必要であった。我々の研究室は四肢の再生を主に行っており、上記モデル作成が未経験だったため、経験豊富な研究室と共同研究を行う予定であったが、研究室間の調整に時間を要し難航した。また実際の免疫染色では抗原抗体反応の調整に難渋し、時間を要した。そのため、進行はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は脊髄、傍脊髄神経節(DRG)の免疫組織学的評価として、逆行性トレーサーであるFluoro Goldを用いて関節内に注射後1週間で傍脊髄神経節(DRG)を摘出しSubstance P, CGRPの陽性細胞数の検討を行うよていである。さらに膝OAモデルにおけるMSCs関節内投与の抗炎症作用の調査として、MSCsにおける抗炎症作用を担っていると認識されているエクソソームの添加による関節内細胞のRNAの変化をマイクロアレイにより網羅的に解析する。またラット生体内での投与したMSCsの関節内の動態や分化の解明のため、GFPラット由来のMSCsを使用する事により投与MSCsの動態を明らかにする。 膝OAモデルに対しGFP陽性MSCsを関節内に投与後2週の時点で関節内組織を採取し、細胞分離し、FACSソーティングにてGFP陽性細胞とそれ以外のホスト細胞に分けその後qPCRを行い、投与したMSCsの局在や分化を観察し、検討する。これらの実験を通し、膝OAの疼痛改善や保存的治療対する間葉系幹細胞の有効な利用方法の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、研究計画では逆行性トレーサーであるFluoro Goldを用いて関節内に注射後での傍脊髄神経節(DRG)の免疫染色を計画していた。上記モデル作成が未経験だったため、経験豊富な研究室と共同研究を行う予定であったが、研究室間の調整に時間を要し難航した。そのため、ラットの購入、飼育が行われなかった、その分昨年度の費用が少なかった。来年度同研究を行う予定のため、繰り越して資金を使用する予定です。また、上記実験の次に予定していたMSCsの添加による関節内細胞のRNAの変化をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する予定であったが、実験計画がやや遅れたため行われなかった、その分の費用が少なくなった。来年度同研究を行う予定のため、繰り越して資金を使用する予定です。
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