腰痛の原因として報告される筋肉脂肪変性について、我々は腰痛患者のMRIにより筋肉脂肪変性の評価を行ってきた。筋再生過程において初期には肥満細胞の集中が報告されており、関与が示唆される。本実験において、肥満細胞由来トリプターゼ(MCT)の刺激によりマウス筋芽細胞(C2C12細胞)が濃度依存的に増殖することを確認した。また、C2C12細胞をウマ血清下で筋分化させる系を使用し、MCTの投与の影響をみた。MCTを投与した群はコントロールに比較して、筋分化が促進される結果が得られた。次に、MCT受容体として報告されるPAR2の関与を考え、PAR-2 agonist を投与したところMCTと同様に、C2C12細胞の増殖を促し、筋分化を促進した。また、PAR2のantagonistを十分量添加した培地では、MCTによる細胞増殖効果、筋細胞分化促進効果は見られなくなった。このことから、MCTによるC2C12の細胞増殖、筋分化促進効果はPAR2を介したシグナルの関与が示唆された。次に筋芽細胞(G8)を使用し、脂肪分化におけるMCT、PAR2の効果をみた。本実験では、試薬(MDI)および低酸素化で脂肪分化する系を使用した。筋分化とは異なり、MCT投与により脂肪分化は抑制される結果となった。以上まとめると、MCTは筋芽細胞において増殖、筋分化を促進し、脂肪分化を抑制させた。これらの結果は、MCTが筋細胞に対して保護的/促進的に働いている可能性を示唆している。
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