研究実績の概要 |
本研究の最終的な目標は、臨床的に問題となる骨欠損を安全かつ確実に治療できるような骨欠損補填剤を開発することである。骨欠損は、四肢長管骨の開放骨折や良悪性骨軟部腫瘍に対する外科的切除、人工関節の経年的な緩みなどに対して付随して発生するが、そのスタンダードな治療法は今なお自家骨移植である。しかし採骨操作に関わるドナーサイトの有害性をクリアし、容積の大きな骨欠損の補填を可能にするには、自家骨を用いずに効率的に骨再生を可能にする新たな医療技術の開発が望まれている。そこで本研究では、生体吸収性を有する人工骨と、消化管潰瘍の治療薬であるランソプラゾールと、幹細胞を組み合わせたハイブリッド型骨再生製剤を開発することにした。 骨髄由来間葉系幹細胞に終濃度が0, 0.1, 1, 10, 100uMになるように水溶性ランソプラゾールを添加し、培養5, 7, 14, 21日後にアルカリフォスファターゼ活性を測定した。その結果、21日後で活性は最大となったがランソプラゾールの濃度依存的な変化は示さなかった。このことから水溶性ランソプラゾールは広範囲な濃度で骨分化促進効果を発揮することが示唆された。また、アリザリン赤染色で石灰化の評価を実施するため、評価方法を確立中である。 プレリミナリーな実験ではあるが、培養骨髄細胞と水溶性ランソプラゾールを頭蓋骨欠損モデルマウスに移植したところ、薬剤なし群と比較し、骨欠損部に骨新生が見られた。これらの結果から水溶性ランソプラゾールに骨分化促進効果があることを示唆する所見が得られた。 平成30年9月より現在のところ、産前産後休業および育児休業取得のため研究を一時中断している。
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