研究課題/領域番号 |
18K16656
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡部 由香 (塚越由香) 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20468383)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 骨形成 / 骨髄由来間葉系幹細胞 / ランソプラゾール / 頭蓋骨欠損モデル |
研究実績の概要 |
これまで動物実験で、培養骨髄細胞と水溶性ランソプラゾールを頭蓋骨欠損モデルマウスに移植したところ、水溶性ランソプラゾールに骨分化促進効果があることを示唆する所見が得られた。 骨形成は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が繰り返され、絶えず骨が作り変えられ、一定に維持されている(骨リモデリング)。先行研究により、水溶性ランソプラゾールの骨芽細胞分化促進効果はCYLDの阻害によるものであることが示されている。破骨細胞もRNKLの下流にTRAF6があることから、CYLDが阻害され、破骨細胞分化も促進されるのではないかと仮説をたてた。そこで本年度は、骨芽細胞における水溶性ランソプラゾールの効果の解析だけでなく、破骨細胞の分化および機能にも焦点を当てて解析を行った。 raw cellにRANK-Lを添加し破骨細胞を分化誘導した。培養課程に水溶性ランソプラゾールを添加し、破骨細胞の分化および機能における影響を解析した。破骨細胞分化マーカーであるTRAP染色を行い、陽性細胞数を計測したところ、予想に反して水溶性ランソプラゾール添加による分化促進効果は観察されなかった。一方、破骨細胞の機能の指標である骨基質吸収確認試験を行ったところ、水溶性ランソプラゾールの濃度依存的に骨吸収が阻害された。破骨細胞の機能にはプロトンポンプが重要な働きを示すことから、これはランソプラゾールが本来もつプロトンポンプ阻害剤としての効果によるものと考えられた。 これらの結果から水溶性ランソプラゾールは破骨細胞分化においてはCYLDの阻害効果を示さず、プロトンポンプ機能は抑制する可能性があることがわかった。今後は水溶性ランソプラゾールの骨芽細胞分化促進効果について、至適濃度、至適添加期間を解析していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に予定されていた、in vitroにおける水溶性ランソプラゾールの至適濃度、至適添加期間の検討について、申請者が産休・育休を取得したため遅れが出ている。 2年度目に予定されていた、頭蓋骨欠損モデルマウスを用いた in vivoにおける水溶性ランソプラゾールの効果の解析も育児休暇取得により遅れが出ている。 3年度目は産休・育休取得により遅れていた解析をする予定だったが、新型コロナウィルス感染症の発生により、実験の停止、テレワーク勤務の実施により、遅れが出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の2点に焦点を当てて解析を行う。 1、頭蓋骨欠損モデルマウスで見られた骨形成作用は、どのような細胞の働きでなされたものかを検討する。 2、破骨細胞分化課程における水溶性ランソプラゾールの分化促進効果を検討したところ、CYLD阻害による分化促進効果は見られなかった。水溶性と非水溶性では構造が違うことから、作用に違いが生じる可能性も考えられる。今後は、骨芽細胞分化過程においても非水溶性ランソプラゾールの効果が見られる条件下で水溶性ランソプラゾールの分化促進効果の至適条件を検討していく。
新型コロナウィルス感染症の流行状況を踏まえながら、感染症対策を実施の上進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請者の産休・育休取得と、新型コロナウィルス発生により実験に遅れが出ている。そのため、次年度使用額が発生した。 翌年度は、「8.今後の研究の推進方策」に記載した課題を解決するための解析を行う。 具体的には、in vitroで検討を解析を中心に、解析に必要な細胞、培養試薬、消耗品等を購入する予定である。
|