研究課題
本研究では細胞低接着性コラーゲン(Low Adhesive Scaffold Collagen:LASCol)をヒト椎間板細胞ならびにラット椎間板ヘルニア・変性モデルに対して用い、具体的に以下の3点を検討することで椎間板再生が可能か検討していく。本研究計画期間中にLASColの治療効果と作用機序を明らかにし、臨床治験の準備の終了を目指す。①まずは脊椎手術時に摘出したヒト椎間板組織より髄核・線維輪細胞を抽出し、LASCol上もしくはアテロコラーゲン上で培養した。ヒト椎間板髄核・線維輪細胞ともにLASCol上でのみ細胞凝集塊(spheroid)の形成と継時的な増大を認めた。さらに多重蛍光免疫染色では、LASCol上で髄核細胞における髄核マーカーbrachyury、前駆細胞マーカーTie2、細胞外基質aggrecanの発現増大と線維輪細胞における線維輪マーカーPAX1と細胞外基質aggrecanの発現増大を認め、LASColがspheroidの形成を介して各細胞の表現型の維持に寄与する可能性が示唆された。②ラット椎間板髄核摘出(ヘルニア)モデルにLASColを移植し、椎間板再生過程について単純X線検査、MRI、組織学的検査での検討を進めている。単純X線検査ではLASCol埋植群での椎間板高の維持を認め、かつ濃度依存性である可能性が示唆された。MRIではLASCol埋植群でのT2 mappingにおける椎間板輝度の残存が示唆された。組織学的検討ではproteoglycan陽性組織の残存度や細胞浸潤度でLASCol埋植群の優位性が示された。以上の結果を受けて、当初の計画通り、上記①②の解析を継続するとともに③ラット椎間板変性モデルを用いた研究を進めていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画よりも進展があったため、平成31年度に施行予定であったラット脊椎椎間板のMRI撮影の研究を平成30年度中に施行した。本研究は3研究機関の共同研究であり、材料準備など時間を要することから研究が施行可能な時期に前倒しして施行したく、特許申請などの観点からも早期化が望ましいと考えられた。次年度も引き続き共同研究を進めるとともに、英語論文の執筆を行い、研究成果の報告に努めていく予定である。
当初の計画通り、①ヒト椎間板細胞を用いた検討、②ラット椎間板髄核摘出モデルを用いた検討の解析を継続するとともに③ラット椎間板変性モデルを用いた研究を進めていく予定である。③の検討を行うことで、②よりもさらに椎間板の障害が高度な変性モデルにおけるLASColの椎間板再生所見が確認されれば、LASColのさらなる有用性を示すことができ、臨床応用へ近づくものと考えられる。また、これら①~③の研究内容について得られた知見を取りまとめ、国内外の学会での発表や国際雑誌での論文掲載など、成果の報告に努めていく予定である。
(理由)次年度に行う予定であったMRI撮影を早期化して本年度に施行したために前倒し支払い請求を行った結果、少額であるが未使用額が発生した。(使用計画)次年度交付分と合算して動物実験に使用し、当初の計画通りに研究を遂行する予定である。
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