ヒト椎間板細胞ならびにラット椎間板髄核摘出モデルに対して細胞低接着性コラーゲン(Low Adhesive Scaffold Collagen:LASCol)を用い、LASColによる脊椎椎間板再生の可能性について検討した。LASColの治療効果と作用機序を明らかにし、中・大型動物を用いた非臨床治験への準備の終了を目指して以下の研究を行った。 ①脊椎手術時に摘出したヒト椎間板組織より髄核・線維輪細胞を抽出し、LASCol上もしくはアテロコラーゲン上で培養した。ヒト椎間板髄核・線維輪細胞ともにLASCol上でのみ細胞凝集塊(spheroid)の形成と継時的な増大を認めた。さらに多重蛍光免疫染色ではLASCol上で髄核細胞における髄核マーカーbrachyury、前駆細胞マーカーTie2、細胞外基質aggrecan・collagen type IIの発現増大と線維輪細胞における線維輪マーカーcollagen type V alpha 1・CD146の発現増大を認め、LASColがspheroidの形成を介して各細胞の表現型の維持に寄与している可能性が示唆された。 ②ラット椎間板髄核摘出モデルにLASColを埋植し、椎間板再生過程についてX線、MRI、組織学的検討を行った。X線評価ではLASCol埋植群での椎間板高の維持を認め、かつ濃度依存性である可能性が示唆された。MRIではLASCol埋植群でのT2 mappingにおける椎間板輝度の残存が示唆された。組織学的検討では細胞外基質量や細胞数でLASCol埋植群の優位性が示され、さらに蛍光免疫染色で椎間板髄核表現型を有する細胞ならびにマクロファージの浸潤を認め、組織再生の活性化が示唆された。 以上の結果を受けて前年度に特許出願を行っており、今年度は英語論文をBiomaterials誌(IF:10.273)へ投稿し、受理・出版された。
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