研究実績の概要 |
腫瘍精巣抗原の発現レベルと軟部肉腫の悪性度に関する研究を展開している。各種腫瘍の網羅的遺伝子発現情報を容易に取得することができるTCGAのデータベースを用い、DEPDC1A, FHAD1, TRIP13, LHX9が高発現群で極めて予後が悪いことをうけ、これらの遺伝子の発現をみることで術後治療の計画に役立てることを目的とした。 未分化多形肉腫および平滑筋肉腫の根治切除材料のホルマリン固定パラフィン包埋切片に対し、DEPDC1AおよびTRIP13の免疫染色を施行したが、一様に発現がみられ、明確なカットオフ値をひくことが困難であった。FHADに関しては免疫組織染色が可能な抗体は見いだせていない。DEPDC1AおよびTRIP13に関しては、染色強度・染色される腫瘍細胞の個数などでスコア化を行い、予後との関連を現在解析中である。
一方、研究の過程において軟部肉腫の組織型を詳細に整理・検討している過程で、非常にユニークな組織形態を示す症例をみいだした。具体的には粘液腫状間質を背景に、管状形態やロゼット形態など上皮様の組織構築を示す悪性腫瘍で、最終的に悪性筋上皮腫として整理したが、EWSR1遺伝子の既知のパートナー遺伝子が検出されず、次世代シーケンサーを用いてさらに詳細に解析した。凍結標本を用いて全RNAシーケンス解析を行ったところ、EWSR1のエクソン9と新規にVGLL1のエクソン2が結合し、新規なドライバー遺伝子として同定することが可能であった。本結果はGenes Chromosomes Cancer. 2020 Apr;59(4):249-254.に掲載された(VGLL1は胎盤にのみ発現する遺伝子で、基本的には腫瘍精巣抗原に非常に近い遺伝子)。
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