研究実績の概要 |
これまでの研究から腰部脊柱管狭窄症患者において黄色靭帯に豊富に含まれる弾性線維がメカニカルストレスなどにより主に背側に傷害が生じ、異常な膠原線維が増生、線維化が進行し、肥厚につながることが示唆された。しかし、細胞レベルではどの細胞が、どのメカニズムで、黄色靭帯の線維化に関わるかはなおも不明のままである。 まず、未固定遺体を用い、黄色靱帯とその周囲組織との関係を確認した。未固定遺体でもHE, Masson-Trichrome,Alcian Blue染色などの組織染色は良好であり、概ね手術検体の黄色靭帯と変化なかった。但し、免疫染色においては一過性に発現する種類のタンパクでの染色は不十分であった。 次に、脊柱管狭窄症モデル動物で筋線維芽細胞の確認を試みた。筋線維芽細胞を動員する方法として、当初自動屈曲伸展装置を使用する予定であったが、実現性の観点から動物モデルとして、30G針による微小傷害を加えることを選択した。実際にマウスで施行してみると、黄色靭帯のエリアが極めて小さく、傷害を加えることが困難な例が存在した。このことより、動物種をラットに変更し、微小傷害を与えることができ、脊柱管狭窄症モデル動物を作成した。またヒト黄色靭帯由来の線維芽細胞に低酸素の刺激を加えたところ、α-SMAやコラーゲンの増加を認め、筋線維芽細胞の発現が見られた。低酸素などの刺激により筋線維芽細胞が動員されることが、黄色靭帯における線維化の機序と思われた。
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